2007年12月25日

「Silver World (Silver Sequence)」

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Cliff McNish 著
Orion Children's Books 出版

 児童書というと、最後にはすべてがきちんと繋がり、不明点なくすっきり終わるイメージがありました。たぶん、「Holes」(「」)などは、その典型ではないでしょうか。

 でも、このSilver Sequenceは、「Silver Child」「Silver City」「Silver World」と通して、割り切れないことが数多く出てきます。なぜ、一部の子どもたちだけが特別な能力を備え変化していくのか。侵略者であり、殺戮者であるRoarとの戦いはいつ始まり、いつ終わるのか。ThomasのBeautyという不思議な力は、誰に分け与えるべきものなのか。次から次へと疑問が湧き、答えがわかったかのように見えて、実は決定的な答えは得られないという状況が続きます。

 子どもたち自身が葛藤を抱え、答えを探しながら苦しむ姿は、ファンタジーでありながら、現実感を強く感じます。現実世界でも、答えがわかっていることは少なく、わからないなりにも立ち向かっていくことのほうが多いはずです。そういう観点では、感情移入しやすいストーリーにはなっています。

 また、それぞれの子どもたちが個性的で、まったく違った能力を持っている点なども現実的です。それぞれの個性を尊重し合いながら、助け合い、チームとして家族のように助け合っていく、という状況は現実では理想と考えられていると思います。

 そう考えていくと、「Holes」(「」)のように、読み終わって、おもしろかった、という感想で終わるのではなく、余韻が長引く作品といえるでしょう。物語としては終わっていても、この先どういう展開になるのか想像を膨らませたり、第1巻から第2巻、第3巻と、それぞれの変化を追いかけて印象の移り変わりを再確認したくなるような作品です。私自身の感想でいえば、第1巻では、わがままな子どものイメージが強かったThomasが第2巻では進んで自分を犠牲にしたり、第3巻では自分の力をどのように活用すればいいのかを悩んだりと、その変化の大きさから、考えさせられる面もありました。

 とにかく、大人が読んでも面白い児童書だと思います。特に、児童書は何もかもきれいに収まり過ぎて面白みに欠けると思われている方には、お勧めです。
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2007年12月04日

「The Silver Child (Silver Sequence)」

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Cliff McNish 著
First Avenue Editions 出版

 以前に読んだ「Silver City (Silver Sequence)」は、実はシリーズの第2巻で、これが第1巻でした。2巻を読んでしまってから、この1巻を知ったので、今さらですが、1巻を読んでみました。

 この1巻では、第2巻で巨大なバリアになって街を守っていたMiloが変身していく過程が、描かれています。また、特殊な能力を備えたThomas、Helen、Emily、Freda、Walterがそれぞれ出合い、地球を守るProtectorとして家族なような連帯感を持っていくところまでの話です。

 身長よりも長い羽根を持ち、銀色に輝く巨大な壁のように空に浮かんでいるMiloが、肉体的な変化を遂げる過程は驚くと同時に、興味を覚えます。なぜ、普通の子どもがこのように変化していくのかと。

 一方、Thomasの場合、精神的な成長が著しく、金持ちのお坊ちゃんといった感じが、だんだん戦うProtectorへと変わって行きます。

 Miloにしろ、Thomasにしろ、どうして特殊な能力を備えていくのかという疑問が高まり、見えない敵への恐怖感が増していくので、この部分を飛ばして第2巻から読んでしまったのは、かなり惜しい気がします。

 あと、第1巻を読んだことによって、第2巻で疑問に思っていたことのいくつかが解決しました。

 たとえば、Helenという少女が常に父親と行動していることです。Coldharbourのバリアの中には、大人は入れないはずなのに、なぜ彼女の父親が例外だったのか、疑問に思っていました。第1巻にはその経緯も書かれていました。

 今さらですが、遡って第1巻を読んでおもしろかったので、次は第3巻を読み結末を楽しみたいと思います。
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2007年09月26日

「The Unsuspecting Gourmet (Missing Persons)」

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M. E. Rabb 著
Puffin 出版

 Missing Personsシリーズ第4巻。実は、このエピソードでシリーズも終りかなと思わせるようなエンディングなのです。主人公のSophieとお姉さんのSamにとって色々なことが落ち着いてしまい、今までのハラハラ感が薄れた感じで締めくくられます。

 毎回居なくなった誰かを探すシリーズですが、今回居なくなるのは、いつもSamとSophieが食事をするPetal DinerのWilda。逃亡の身であるSamとSophieは本当はユダヤ人なのですが、クリスチャンとして過ごしています。そのため、ユダヤ料理のことを口にしてはいけないのに、Sophieはつい口をすべらせてしまいます。Sophieのお母さんがSophieに作ってくれたというその料理が気になって仕方のないWildaはSophieに作ってくれるようにせがみます。仕方なく、適当なレシピをでっち上げてしまったSophie。

 そして、そのレシピに手を加え、Wildaは料理コンテストに応募します。幸か不幸かそのレシピが入賞してしまうのです。テレビのロケ隊が街に乗り込んできて、街は大騒ぎです。でも、逃亡の身のSophieは、レシピ考案者のパートナーとしてテレビ出演するわけにもいきません。カメラ恐怖症なる病気を装い、難を逃れようとするSamとSophie。

 今回は、Sophieのロマンスも発展し、SamとSophieの上司のGusのロマンスも発展し、みんなカップルになって、幸せ感が盛り上がります。

 Sophieは15歳。15歳くらいのとき、私はまだまだ子供といった感じで、Sophieのような恋愛に対する価値観みたいなようなものはありませんでした。今思えば、幼い私だったと懐かしく思い出させてくれる面もありました。

 ふたりが事件を解決するところを、もっと読みたいと思っている私は、大学生くらいになったSophieが、シリーズにまた戻ってきてくれるとおもしろいのではないかと密かに思っています。
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2007年09月20日

「The Venetian Policeman (Missing Persons)」

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M. E. Rabb 著
Puffin 出版

 Missing Personsシリーズ第3巻「The Venetian Policeman」の人探しは、SamとSophieのボスであり探偵のGusの息子、Jack。高校を卒業したっきり、消息不明なのです。親の反対を押し切って演劇の世界に入ろうとし、父親のGusと大喧嘩の末、ある日突然いなくなったJackを、SamとSophieは勝手に探し出そうとします。勝手にというのは、Gusには内緒で。両親を亡くし、姉妹だけになってしまったSamとSophieにとって、お互い生きているのに会うこともなく暮らしている二人を見過ごせなかったのでしょう。

 そして今回は人探しだけでなく、ペット探しも並行して進みます。街の住人のペットが次から次へと居なくなって、これはペット誘拐ではないかということになり、警察に届けを出します。そこで、その捜査をかってでたのが、Alby。彼が無能な捜査官だと知っている街の住人たちは、不安になり、SamとSophieにも捜査をして欲しいと頼みます。

 シリーズ第2巻「Chocolate Lover」では、アメリカと日本の文化の違いをしみじみと感じましたが、今回は別のことを思いました。人はみな一緒なんだな、と。

 Gusは今は私立探偵ですが、以前は警官で、父親も祖父も警官という警官ファミリーで育ったのです。そのため、息子であるJackにも警官になることを強く求めたため、Jackが家を飛び出すことになってしまいました。親の夢を子供に託そうとしたり、子供の夢を非現実的だと決めつけてしまったり、ということは日本でもよく聞きます。

 もうひとつは人とペットの関係。ペットが居なくなった街の住人たちはみな、ペットのことを心から心配し、家族同然だと語ります。行方不明のペットの情報を求めるポスターにも、ペットの特徴として、そのペットが好きなドラマが書かれていたりして、ペットを飼っていない私は、くすっと笑ってしまうようなシーンもあります。そのあたりも、今の日本の状況とそっくりではないでしょうか。

 そしてもうひとつ。シリーズ第2巻で芽生えたJoshとSamのロマンスもこの巻で進展します。そして、Sophieは第1巻、第2巻、第3巻とルックスのいい男性に次から次へと熱中しますが、とうとうこの巻で本命と出合います。

 人探し、ペット探し、ロマンスと大忙しながらも、楽しい第3巻でした。
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2007年09月07日

「Chocolate Lover (Missing Persons)」

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M. E. Rabb 著
Puffin 出版

 今回のMissing Personsシリーズ第2巻「Chocolate Lover」は、「The Rose Queen」でVeniceという小さな町で隠れ住むことになったSamとSophieの2ヵ月後です。

 当然といえば当然なのですが、アメリカが舞台の小説を読むと、アメリカの文化というものをあらためて考えさせられます。

 今回しみじみと思ったのは、人種。日本に居ると、周りの人はみな同じ人種という感覚がしみついているように思います。特に地方ではそうではないでしょうか。さして小さい街とはいえない大阪から東京に来ただけでも人種の多様さに驚き、周りは日本人ばかりと日常においていかに決めてかかっていたかを自分で再認識しました。

 その対極にあるといってもいいのがアメリカ。移民の国であり、人種の坩堝とも呼ばれている国。そして、SamとSophieはユダヤ人なのです。

 両親を失くし、犯罪を犯し隠れ暮らす身であり、しかもまだ17歳と15歳の姉妹ですから、家族や親戚がいれば、と願う気持ちはよくわかります。血がつながっている、つまり同じユダヤ人としての感情や感覚を共有できる親戚、ファミリー。

 物語は、ある講演会の告知で見た講演者の名前が自分たちの本名と同じでだと気づいたSophieが講演会に出かけたいと言い出すところから始まります。

 そして、前回同様、話は人探しへ。今回の人探しは講演者であるLeoが若いころに結婚を約束していながら、ある日忽然と消えた昔の婚約者。約半世紀もの間、会わずにいた昔の恋人に会いたいと願う、SamやSophieの親戚かもしれないLeo。昔の恋人を探している間に、Leo自身のことを知り、自分たちの親戚かどうかたしかめたいと思うSamとSophie。それぞれの思惑で話は進みます。

 でも、人探しだけではありません。Leoは消えた婚約者と違う女性と結婚し、今では孫のJoshがいます。そのJoshとSamのロマンスもサイドストーリーとして楽しめます。Joshは自分はユダヤ人の女性と付き合うつもりだったと話し、それを聞いて自分の素性を明かせたらと思うSam。

 そして、愛する人の前から突然消えた女性の裏には、ホロコーストの悲劇も絡んでいて、ますます人種というものを考えさせられてしまいます。

 今回もちょっぴり無茶をするSophieは、アメリカの文化や人種などという興味深い側面を除いても、今回も十分楽しめました。
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