2016年09月30日

「日本のタブー」

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副島 隆彦/SNSI副島国家戦略研究所 著
ベストセラーズ 出版

 本質的な部分を知ろうとせずにものごとをイメージで判断してしまうことは、誰にでもあると思います。そしてそのイメージが誰かによって巧妙につくりあげられたものならば、その本質を見極めることは、一種のタブーといえなくもありません。タイトルのタブーは、そういう意味です。

「日本じゅうの人々が間違ったイメージに捉われているが、正しくはこうだ」と、敢えて(禁を破って)真実を披露しようという語調で始まりますが、SNSI副島国家戦略研究所 の関係者がそれぞれ10ページ程度で述べる各論は、そこまで大層な内容ではありません。たとえばある人は、魂は不老不死だと根拠を述べることなく唐突に主張し、あとは延命治療や尊厳死の話題でお茶を濁しています。人の思い込みを覆そうという意気込みなら、もう少し論理的に展開すべきでしょう。

 過激な導入で読者をつって、薄っぺらな内容を言いたいように言っているだけに見えて、あまり印象がよくありませんでした。
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2016年03月11日

「働くことと生きること」

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水上 勉 著
集英社 出版

 生きる糧を得るために働く必要のあるわたしにとって、働くことと生きることは密に結びついていますし、また、どちらを欠くこともできません。それでも、この作家がここに書いている「働くこと」も「生きること」も、わたしが見てきた景色とは随分ちがっていて、長い紐をたぐり寄せるように考えないと理解できないことがほとんどでした。

 わたしもそれなりに長い期間働いてきましたし、生きてもきましたが、この本に書かれたことをすんなりと理解できない理由のひとつは、この作家が生きた時代とわたしの時代が、半世紀に少し足りない時間枠で、ずれていることにあると思います。

 ただ、そのずれを乗り越えてでも、この作家の言わんとすることを咀嚼し、いくらかでも自分の身に置きかえて考えてみることは、意味あることでした。

 この本に書かれてある「天職」も「己れの道」も「労働の尊さ」も、きちんと理解できたかどうかわかりませんが、仕事に向きあうときの芯となる心構えのようなものをわたしなりに考える機会を得た気がします。
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2015年07月23日

「翻訳者の仕事部屋」

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深町 眞理子 著
筑摩書房 出版

 ミステリーを数多く翻訳されている著者だけに、アガサ・クリスティーやアーサー・コナン・ドイルなどの作品に対して、表面的に読んでいるわたしなどにはわからないことが指摘されてあり、楽しめました。たとえば、食事がまずいといわれるイングランドのロンドンに居を構えるシャーロック・ホームズですが、意外にも食にこだわりがあり、しかも作品には食事や食べ物の描写が結構あるそうです。4つの長篇と56の短篇で198カ所、一作平均3.3カ所もあるとか。コカインやモルヒネのような薬物しか印象に残っていませんでしたが、実際はかなりの料理が登場していて、その一部は詳細も紹介されています。意外でした。

 あと翻訳に関していえば、「フィネガンズ・ウェイク」や「不思議の国のアリス」をとりあげ、柳瀬尚紀の翻訳を賞賛されていました。実は、「フィネガンズ・ウェイク」は、以前読もうとしたときは、その面白みがまったく理解できず、すぐ放り出してしまったのですが、「ジョイスが『フィネガンズ・ウェイク』においてなそうとしたのは、みずからの造語−−ジョイス語ーーによって、意味の飽和状態をつくりだすこだったが、同時にまた、彼は音の復権をも意図していた。事実、これの翻訳にとりかかろうとしていたイタリア人のもとをわざわざ訪ねて、意味よりも音を大事にしてほしいと頼んでいる」という柳瀬氏の解説を読んで、いつかまた挑戦してみてもいいかなという気になりました。
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2015年03月28日

「ウドウロク」

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有働 由美子 著
新潮社 出版

 読んでいて気持ちのいいエッセイです。

 理由のひとつは、ご自身の失敗や弱点をある程度さらけだしていることです。しかも痛々しい感じではなくちょっと笑える感じで読めるよう配慮されています。

 ほかにも、仕事をしていくうえで大切なことがさらりと書かれてあるなど、バランスの良さが感じられます。年齢に応じた経験や視点がなければ薄っぺらに見えてしまうものですが、それはありません。

 おそらく40代の働く女性は共感をもって読めるのではないでしょうか。わたしは第一線どころか現役らしく働いている状況でさえないので羨ましいと思いつつ読みました。
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2015年01月24日

「なんとか生きてますッ」

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大宮 エリー 著
毎日新聞社 出版

 著者のことを知らないのですが、雑誌の新刊レビューを見ておもしろいのではないかと思い読んでみました。

 読んでわかったことは、著者はエッセイを書くほか、ラジオ番組のパーソナリティをしたり、テレビ番組やコンサートに出演したり、個展を開いたり、とにかく多才で忙しい方のようです。その忙しい日常でひき起こしてしまった自らの失敗を中心に語ったエッセイです。

 プロがおもしろおかしく書いたわけですから、もちろんおもしろいのですが、なかでも母上とのやりとりが微笑ましく、読んでいて楽しい気分になれました。膝が悪い母上を思って娘が床暖房のある部屋を用意したのに、もったいないとそれを使わず室内でスキーウェアを着て過ごす母上。娘の部屋を訪ねる口実欲しさに洗濯をしてあげようと申し出るものの、ちょっぴり手抜きするつもりで"あること"をしてしまう母上。なんとなくエッセイに登場する以外の場面も想像できて、和みます。

 失敗してしまったあと、なんであんなミスをしたんだろうと落ち込んだときに読むといい本だと思います。
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