2009年11月02日

「大阪の神々」

20091102[OsakanoKamigami].jpg

わかぎ ゑふ 著
集英社 出版

「大阪の神々」とは、意味するところがよくわからないタイトルです。読み終わってもわかりませんでした。たぶん、大阪には他の地(基本的には東京)にはない価値観があり、その価値観を神さんになぞらえて語ろうというもののような気がします。(関西では、神さまとは言いません。神さんと「さん」づけです)

大阪弁の詰め合わせ」と同じ著者ですが、あちらは大阪弁ということばのニュアンスに重きが置かれていて、こちらは純粋に大阪人の価値観(ものさし)を語っています。

 タイトルはともかく、中身は「大阪弁の詰め合わせ」同様、とても説得力があります。著者は大阪の真ん中で生まれ育ったうえ、鋭い観察力もお持ちのようで、身近な家庭事情などの経験をもとに、なるほどそういうことだったのか、と頷ける解釈を展開しています。

 なかでも、東京と比較しながら、男女の役割を分析しているあたりは、とても説得力がありました。こういうところにも商売人を基礎として発展してきた大阪の文化があらわれているのかと思うと、おもしろく読めます。

 わたしにとっては、東京出身の人たちは大阪の特異性をこういう視線で見ているのか、という意味で勉強になった本です。逆に、転勤などで大阪に引っ越さなければならない人たちの手引きにもなりそうな本です。
posted by 作楽 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(関西) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月26日

「大阪弁の詰め合わせ」

20091026[OsakabennoTsumeawase].jpg

わかぎ ゑふ 著
講談社 出版

 大阪弁のことばが辞書のように並べられ、対応する標準語訳が付されたあと、エッセイ形式でそのことばのニュアンスが説明されています。

 なかには「たしかにそういうニュアンスだ、うまく訳しているなあ」と思うものもあります。たとえば、以下です。

 ケチやない! → よく見ましょう
 買(こ)うてもええけど…… → まだなにか付けてくれる?
 行っとこか → そうしておこうか
 それはないわ → きっちりしてください/いまさらひどいわ
 ワヤですわ → ダメです

 東京に暮らすようになって、大阪と違うと感じることがしばしばあるのですが、どう違うのかはっきりわからないことが意外と多いのです。違和感を感じたことを思い起こしながら、この本を読むと首をぶんぶん振って納得する部分が多いのに驚きます。

 日々の生活に一番密着している仕事の場面で使うことばは、ドキリとするくらいです。たとえば、「あきまへんて」の欄。これには、「いまのうちにどうにかしましょう」という標準語訳があてられています。

 関西では、部下が上司にダメ出しするのも一般的です。(もちろん、上司が部下にダメ出しするのは東西の共通でしょうけれど。)上司の計画に漏れがあるときも、リスクを過小評価しているときも、「あきませんて」とか「そら、あかんでしょう」とか、突っ込んでいました。いまは仕事では標準語を使っているので、「それじゃ危ないでしょう」とか、その都度状況に合わせてことばを選ぶようにしていますが、迷うことも多く(関東出身の方々の)他人の会話を真似しようと思っていても、なかなかチャンスがありません。やはり、この本にあるとおり関東では部下が上司に突っ込む度合いが関西と関東では違うのだと思います。関西では、いくらでも修正や立て直しがきくときに「あきませんて」と言って、上司と部下双方が動くような気がします。だから「いまのうちにどうにかしましょう」という訳はよくできていると感心してしまいます。

 ただ、仕事というのは社風も大きく影響するので、関西と関東で違う会社で働いているわたしとしては自信がなかったのですが、この本を読んで、やっぱり、と感じました。

 別に関東から出ていくつもりはない、という方にとっても、大阪人と仕事をなさる機会があれば、読んでるあいだ笑えて、多少参考にもなる、という本だと思います。
posted by 作楽 at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(関西) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月20日

「大阪弁ちゃらんぽらん」

20091020[OsakabenCharanporan].jpg

田辺 聖子 著
中央公論社 出版

 いろんな品詞にわたる大阪弁をとりあげて、それぞれを考察したもの。著者の大阪弁に対する愛着が伝わってきます。

 以下が目次。

  ああしんど
  「あかん」と「わや」
  「あほ」と「すかたん」
  えげつない
  チョネチョネ
  けったいな
  こまんじゃこ
  あんばい
  ややこしい
  しんきくさい
  いちびる
  ねちこい
  あんだらめ
  あもつき
  あかめつる
  ぼろくち
  ウダウダ
  タコツル
  「サン」と「ハン」
  てんか

 あんだらめやタコツルなどは、わたしは使ったことがありませんが、ほかは頻度に差はあるものの日常的にに接してきたことばです。しかし、説明できるかというと難しいものが多いです。

 関東に住むようになってすぐの頃、関西弁について説明しなければならない状況に陥ったことが何度もありました。「てんか」のような語尾変化で明らかに関西風といったものは避けられるのですが、「いちびる」といった普通の動詞に見えるものなどは、関西弁という意識がなくつい使ってしまい、どういう意味か訊かれる羽目になったものです。しかし、この「いちびる」の説明は本当に見事でした。こういう風に説明すればよかったのか、と今さらながら思いました。

 また、あほのニュアンスも簡潔に説明されています。「大阪のあほは、これは私の長年の持論であるが「マイ ディア……」という感じで、親愛をこめた、ぼんやりした雰囲気の言葉である。」とあります。この「親愛」ということばが出てくるあたり、うまいなあ、と思います。「あほやなあ」と言われても、傷つくことはありません。そのあたりが、関東の人には説明しにくく、あるとき「上司とかにあほって言われたら、とりあえず安心するし」と言ったら、驚かれてしまいました。あほと言われているうちは、見下されていることもなければ、見捨てられていることもありません。上司が想定する範囲のミスをしてしまい、注意するようにと言われている程度と受け止められます。これが、馬鹿になると、この先を案じることになります。

 ほかに、ウダウダは、ごじゃごじゃと比較されています。ウダウダはまったく理のないことをいうことで、ごじゃごじゃはそれに比べるとまだ言い分が通りそうなニュアンスがあるそうです。言われてみれば、そのとおり。

 大阪弁を通して、人と人のつながり方や、自分自身や他人との距離のとり方などまでも見えてくるような本です。
posted by 作楽 at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(関西) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月04日

「大阪呑気大事典」

20090604[OsakaNonkiDaiJiten].jpg

大阪オールスターズ 編著
宝島社 出版

 大阪で生まれ育った生粋の大阪人というほどでもないのですが、三年前に思い立って東京に出てくるまで関西から出たことがありませんでした。

 東京に来てみると、日常のなにげないことで驚かれたり、ことばの意味が通じなかったり、 それなりのカルチャー・ショックを経験しました。

 驚かれたのは「アメちゃん」。いい歳をしたおとながアメ玉のことをアメちゃんというのに驚かれました。家族はみなそう呼ぶというと、さらに驚かれました。この事典に堂々とエントリされているところを見ると、やはり全国区として認められた呼称ではなかったようで、今さらながら、わたしが驚きました。
<<<<<
【アメちゃん】名詞
アメちゃんは駄菓子屋のうすい緑色のガラスのびんの中に入っていました。ぼくは1個5円の大きいアメちゃんが好きで、その日の気分で色を選びました。なめると、まぶしてある砂糖が歯に当たってガリガリいいます。なめてもなめても減らないので、よく掌の上に出してながめました。いつも今日こそは最後までなめようと思うのに、いつも途中でかんでしまいます。
>>>>>

 わたしの知っている駄菓子屋のアメちゃんは、ヒモの先についていて、いちごのような色と形をしていました。

 あと、人のことを説明するときに通じなくて驚いたのが、いちびりです。いちびりは、大阪にしかいないのか、と思ってしまいました。
<<<<<
【いちびり】名詞
小学生時分、ぼくの通知表の短信欄には必ずといってよいほど「明朗快活」と記されていて、ぼくはそれが満更ではなかった。所がある担任が父兄懇談の折「南端くんはちょっといちびりですね」と母に告げ、それを聞かされたぼくはいちびりではない明朗快活を心懸けていくうち、次第に暗くなっていった。
>>>>>

 この説明では、東京の方には通じないかもしれませんが、いちびりは、羨ましがられるような感じではなく、「もう、うるさいなぁ」みたいなニュアンスに近いような気がします。

 辞書のように使えないのですが、大阪を知る人はこう言う(考える)のか、という好奇心でぺらぺらとめくるのが、この大事典の正しい使い方かもしれません。
posted by 作楽 at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(関西) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする