2007年05月21日

「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」

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井沢 元彦 著
徳間書店 出版
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一神教から分かれた三つの宗教、できた順番にユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、一神教の原理の中では、お互いの正義が違うために殺し合う。つまり、生命尊重の原理よりも正義が優先し、正義が優先するゆえに殺し合うことすら起こっているわけです。
 じつは、日本の今の教育を受けただけでは、かなりの高等教育を受けても、その理由はわかりません。明治以後の日本の近代化の中で、まず先進国に追いつき追い越せということが一番基本になっていたために、実際に役に立つ学問、機械工学、造船、冶金、建設、社会の仕組みである法律、保険といった実用的知識を求めることに汲々とし、その根源にあるものを考えようという意識があまりありませんでした。
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 著者は、この本を書こうとした理由を上記のように説明しています。私は、高等教育などという以前に、勉強しない学生でした。そのため、著者が想定している以上に宗教やその歴史に関する知識を持ちませんが、それでもこの本はわかりやすく、自分の身の周りのことを理解する助けになってくれると思います。

 自分の身において、外国を思いうかべるとき、一番にあがるのはアメリカです。自分自身の仕事のこと、経済の問題、法律の問題、安全保障の問題。関心の度合いは違っても、数多くの面で気になる外国です。ただ、そのアメリカにおけるキリスト教の問題をどの程度わかっているかといわれると、ほとんど何もわかっていなかったといえます。知人のアメリカ人の多くがキリスト教信者であり、彼らが今生きている人生を、永い人生の一時期と捉える考え方さえ、何を指しているのか、理解できていませんでした。

 そんな私にとって、ゼロから教えてくれるこの本は、目から鱗と言えるほどのインパクトがありました。

 この本は、最初に著者が三つの宗教の流れを俯瞰的に述べ、中盤でユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれの代表と呼べるレベルの方々と著者の個別インタビューを掲載し、最後に、著者の知人であるアメリカ在住の日本人と交わしたメールの内容が加えられています。

 著者の説明部分は平易なことばながら、その後の内容を理解するのに必要な知識を不足なく与えてくれます。

 また、中盤のインタビューは、それぞれの宗教者の自宗教の弁護というか他宗教に関わる人々に対する批判は、丁寧なことば遣いながら、テロや戦争へと発展していく要素を持っていることを感じざるを得ないものです。

 最後に登場する著者の友人は日本人だけに、日本における宗教をわかった上で、アメリカにおけるキリスト教を見ているので、私が一番理解しやすい部分でした。

 どれも興味深い内容でしたが、一部分だけを取り上げるとすれば、ふたつあります。

 ひとつは、宗教の問題をより難しくしているのは、宗教が政治や経済活動とも密接に結びついていることです。利権争いを外して宗教問題を扱えないと納得できました。それは、イスラム教の言い分としてインタビューを受けたドクター・ムサ・モハメッド・オマール・サイートが強調しています。

 そして、特に宗教に関心のない私から見るとそんなバカなと思うようなことに、高い価値を認めるよう信者の子供たちは育て上げられ、歴史は続いていくということです。たとえば、次のようなことです。
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世界貿易センターに突っ込んだあのテロリストたちが、なぜ死を恐れなかったのか。それはコーランの教えを信じていたからです。異教徒を殺して殉死する者は即、「天のパラダイスに行って、七ニ人の処女を抱ける」との教えを。
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 グローバル化が進む現代において、どの宗教がどういう歴史をもち、どういう影響を人々に与え続け、今なお強大な力をもっていることを、各人知っておくべきだと思います。もし私のように何の知識も持たない方がいらっしゃれば、強く勧めたい本です。
posted by 作楽 at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(宗教・神話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月11日

「おとぎ話にみる人間の運命―個人の生を超えるものへ」

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ヴェレーナ カースト 著
入江 良平・河合 節子 訳
新曜社 出版

 「神話の心理学」では、神話の突拍子もない展開に、へぇ、という感じでした。紹介されている神話の中では、親の目から子供が生まれたり、元は男性だった女性を子供を産んだり、ありえないことの連続でした。

 同じように、ありえないことばかりが続く、「三本の黄金の毛をもつ悪魔」というおとぎ話をもとに、人間の運命とそれを信じる人間についてユング心理学の立場から書かれた本がこの「おとぎ話にみる人間の運命」です。

 「三本の黄金の毛をもつ悪魔」はグリム童話で、福の皮(出産のときに通常は落ちる羊膜が子供の頭の上に偶然のっている場合があり、それを福の皮や福頭巾と呼ぶ)をかぶって生まれてきた男の子が悪魔の黄金の毛を三本手に入れる道のりの話です。福の皮をかぶって生まれてくる子は、人生においてすべてがうまくいくと信じられています。つまり、幸せが約束された運命なのです。

 この運命という考え、私にとってはとても大きいので、ユング心理学の解釈は本当に難しく、正直に言うと全然わかりませんでした。

 なぜ、運命が私にとって大きいのか?それは、信じると、何もしたくなくなるからです。もし運命というものがあり、その通りになるのであれば、何をしたって私の未来は変わらないと思うのです。だったら、何もしたくない。でも、何もしないとつまらないし、もし運命というものがなければ、私の時間は私によってつまらなく無意味なものになったことになります。

 そう考えるとややこしい。

 でも、運命の信じ方、というのがこの本を読んで少しわかったような気がします。主人公の福の皮少年は、幸せを約束されているがゆえに、色々な困難に出会います。そして、最初は単なる幸運によって、それらの難を逃れます。しかし、物語の後半、この話のタイトルになっている黄金の三本の毛を取りにいく道のりにおいては、少年は自らの運命を信じるがゆえに、困難に立ち向かい、知恵を絞り、自ら行動していくのです。

 そう考えると、私たちはみんな、幸運な運命を持っていると信じながら、色々な苦労を乗り越え、知恵を絞り、不安に襲われたときには運命を思い出しながら、前に進むというのが正しい運命の信じ方なのかな、などと漠然と思いました。

 成功するには、常にポジティブな考えを、とよく言われます。でも、それが難しい。自分は幸運な運命の持ち主だから、頑張れば絶対にこの困難を切り抜けられる、と運命に頼る方法があってもいいのではないでしょうか。

 この本の解釈と合っているかどうか、全然自信はないですが、読んでいるうちになんとなくそう思いました。
posted by 作楽 at 00:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(宗教・神話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月06日

「神話の心理学」

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河合 隼雄 著
大和書房 出版

 自分のものでありながら、全然わからないのが、心や頭と言われる部分。「どうして」と自分自身に問いかけても、よくわからないことのほうが多いのです。だから、最近心理学という言葉に惹かれるようになりました。本音を言うと、心理学という学問がどんな学問か正確にわかっているという自信はないのですが、なんとなく霞がかかって見えていた自分がはっきり見えてくるように思えるのです。

 そういう自分自身の傾向から手にとったこの「神話の心理学」。神話に対しても無知なので、よくわからないのです。なにしろ、父親の左の目から娘が生まれたり、男性が女性になって子供を生んだり、クマと人間が夫婦になり子供をもうけたり。なんでもありの世界なのです。そういう神話が、現代の私たちとどんな関係があるのか、と思ったりするのですが、それがこの本の不思議なところで、そうかもしれない、と思えることがあちこちに点在するのです。

 なるほど、と思ったことのひとつにアメリカ先住民のジョシュアの神話があります。コラワシと名無しの二人が世界の創造主だというお話です。コラワシは動物や人間を創ろうと一所懸命になるのですが、成功しません。一方、名無しのほうはただ煙草をすって時間を過ごすだけで家と女性を手中にし、16人の子供をもうけるのです。その子供たちが人類の始まりだというのです。

 懸命に何かを創ろうとする者が結果を出せず、ただ煙草をすっている名もない者が真の創造主になるのです。この本では、まったく新しい創造は無為(無意識)から生まれるということをこの神話の中に見ているのです。そう言われれば、コツコツとした作業からは、前代未聞の新しいものは生まれないような気がします。

 このような考察が連なっているこの本、神話について知らないけど雑学として知っておくのも悪くないという方にお勧めのちょっと視点を変えられる本でした。
posted by 作楽 at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(宗教・神話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする