2017年04月06日

「心にとどく英語」

20170406「心にとどく英語」.PNG

マーク・ピーターセン 著
岩波書店 出版

 タイトルにある「心にとどく」とは、『ニュアンスを正確に』といった意味です。普段なんとなく英語を使っていますが、『なんとなく』使っていただけに、間違って使っていた用語が次々と見つけられて、読んだ価値がありました。

【from now on (for a change)】
『これから』というタイミングを強調したいときに、from now on を使っていましたが、『これまでと違って』というのが正しい『強調』点だそうです。

I'll pay the NHK 'reception fee' from now on.

 上記の例は、単に「これからNHK放送受信料を払う」という意味ではなく、「今までずっとなんとか払わずにすんでいたが、バレてしまったので、これからはちゃんと払うしかない」というニュアンスだそうです。わたしが『これまでと違って』を強調したいときに使っていた for a change は、また『これまでの状態』に戻ることを想定した『たまには』の意味になるようです。

Can we talk about something other than Hollywood for a change? We're educated people.

 上記の例は、「たまにはハリウッド以外の話ができないかな。ぼくたちは知識人だろ?」と訳されています。

【(目的語の正当性を疑う) challenge】
U.S. May Seek to Challenge East German Medals

「米、東独のメダル破棄を要請する」と訳されている上記の新聞の見出しのように、challenge を動詞として使うのは、わたしには思いつかない例ですが、この challenge の語源は「誹謗」であり、正当性等を疑って対決を申し入れるのが、基本となる意味だそうです。そこまで強い意味とは知りませんでした。

I challenged him to run in a marathon.

もうひとつの例は、人が主語になっていますが、「じゃあ、マラソンができるなら、やってみろ」という訳になっています。語調がわたしの認識より強いです。これからは慎重にこの単語を使いたいと思いました。

【(迷惑の) on 】
Don't give up on me now.

 上記の例は、映画からの引用で、足を洗ったはずの主人公がまた犯罪に手を染めようとしているので、弁護士であり恋人である女性が「ちゃんとした人生を取り戻すために、私も一緒に頑張ってきたんじゃないの。あなたがそれをあきらめてヤクザに戻ってしまったら、困るのよ」という感じだそうです。前置詞は、奥が深く、いつまで経っても理解できた実感が持てません。

【(エラそうにならないための) you】
 小説の会話などで、明らかに自分自身のことを指しているのに you が使われていることが時々あります。初めて読んだときは「あれ、自分の話だよね?」と混乱しました。自分のことなのに、一般論の you を使う理由を著者は、自慢話にならないように使われるケースが多いと説明しています。

レポーター: How does it feel to win Wimbledon for the first time? (ウィンブルドンの初優勝は、どんなお気持ちですか?)

選手: Well, when you train hard every day for years with one goal in mind, and some days you are just ready to give up, and then suddenly you find yourself at the top like this, you feel like you must be dreaming. (そうですねぇ、一つの目標を目指して何年も毎日続けて厳しいトレーニングをやってきて、そして、もうやめようかと思う日さえあった上、突然こうして成功の絶頂に達したとなると、まるで夢のような感じですね。)

 日本語と比べて、主語を省くのが難しい英語の場合、こうして『私が、私が』とエラそうになるのを避けるのだと納得できました。
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2017年04月05日

「香妃の末裔」

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波平 由紀靖 著
あさんてさーな 出版

 以下が収められた短篇集です。

−香妃の末裔
−遺稿
−星笛鯛
−天鉄
−摩天楼
−狂気の画廊
−翠窯
−蟷螂の斧

 筋書きとしては、おもしろい作品が多いのですが、あまり楽しめませんでした。平板な説明ばかりで、こまかな描写が少ないというか、読んだことが自分のなかで自分なりのイメージになりませんでした。また意外な結末が用意された作品ほど、登場人物に魅力が感じられず、共感できません。

 たとえば「香妃の末裔」では、主人公の男性が偶然知り合った女性に惹かれていくのですが、最後に意外な事実が明らかになった途端、その女性が屁理屈では秀でていても、おとなのルールを理解しようとしない傍迷惑な人に見えてきます。

 また「遺稿」でも、最後に意外な事実が明らかになった時点で、物語の語り手である作家が白々しい嘘を重ねてきた人になってしまい、共感できなくなってしまいます。もし、作家の物語を生み出す苦しみや葛藤が描写されていれば、多少は違った印象を残すことができたかもしれないと思うと惜しい気がします。

 こんな調子で、どの作品もしっくりときませんでした。わたしには向かない作家なのだろうと思います。
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2017年03月24日

「トレント最後の事件」

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E・C・ベントリー (E. C. Bentley) 著
大久保 康雄 訳
東京創元社 出版

 帯に『乱歩が惚れた大傑作』とあります。半世紀以上にわたって読み継がれている作家、江戸川乱歩が高く評価したのも頷ける作品です。

 妻とはこうあるべきといった常識、携帯電話ではなく電報が最速の通信手段であるといったインフラ、指紋採取が最先端だという科学捜査、さまざまな面で古さを感じるのですが、ストーリー展開は、古さを感じさせるどころか、いまでも斬新にうつります。

 この作品の探偵役は、新聞社から派遣されたトレントで、実業界の大物の死を調査します。トレントは、ほかの探偵同様、精力的に証拠を集め、推理を巡らせ、ひとつの結論に達します。通常の探偵小説なら、探偵役が推理を披露して、犯人が特定された時点で、結末を迎えます。この作品の場合、探偵が新聞社から派遣されている関係で、警察を出し抜いて真実を新聞で報道しようとトレントは文章をしたためます。その記事が新聞に掲載されると思いきや、まったく異なる道をたどります。さらに、これで一件落着と思ってから、またひとつ読者の予想を裏切るできごとが起こります。

 そういった基本展開を裏切るストーリーであるにもかかわらず、プロットに無理が感じられません。トリックを開陳するためだけの推理小説と違って、心理面でも辻褄があうよう巧みに作りこまれています。

 探偵が結論を出した中盤以降が、特に楽しめました。
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2017年03月23日

「明治大正 翻訳ワンダーランド」

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鴻巣 友季子 著
新潮社 出版

 翻訳家である著者がさまざまな切り口から、明治・大正時代の翻訳文とそのエピソードを紹介しています。この本を読むまでは考えたこともありませんでしたが、日本語の外の世界にあるものを、日本語の世界にいる人たちに伝えようとした人たちは、一世紀以上も前から試行錯誤を繰り返してきたのだと気づかされました。

 紹介作品のうち、新聞に連載された、黒岩涙香(るいこう)の翻案作「正史実録 鉄仮面」は、読者を楽しませたいと苦心した黒岩涙香によってストーリーが大胆に変更されました。どれほど面白くなったかは、著者の感想に頼らずとも、この作品が一世紀も経ってから新訳が出るほどの人気を得たことから窺い知ることができます。ここまでストーリーを変えても翻案と呼んでいいのかわかりませんが、「鉄仮面」の面白さを伝えたいという熱意は並大抵ではなかったようです。

 大ヒット作はほかにも、アニメで有名になった「フランダースの犬」があります。初の邦訳者は、日高柿軒(しけん・1879〜1956年)で、本国での出版(1827年)から約40年も経ってから、出版されたそうです。そのとき、ネロは清、パトラッシュは斑(ぶち)、ジャンおじいさんは徳爺さんという名で登場しました。それから約一世紀が過ぎ、ネロとパトラッシュを知る人もいない地元アントワープに日本人観光客が続々と訪れるほど、「フランダースの犬」は日本人に親しみのある作品に育ちました。

 そのほか、数え切れないほど数多くの子供たちに読まれてきた「小公子」は、初出が「女学雑誌」で、そこでは巌本善治妻と紹介されていた若松賤子(しずこ・1864〜96年)が翻訳しています。(翻訳家を誰々の妻と紹介するほど職業婦人が珍しい時代だったということでしょうか。)若松賤子は、早くに亡くなっていますが、もし翻訳を続けていれば、どんな作品が「小公子」のあとに続いたのでしょうか。

 これだけの作品を育てた人たちがいたことに感謝したい気持ちになりました。
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2017年03月22日

「脳科学医が教える他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法」

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高田 明和 著
幻冬舎 出版

 一般的にはあまり知られていない HSP (Highly Sensitive Person) について、該当者である著者が、おもに自らの体験を書いている本です。

 HSP とは、タイトルにある『他人に敏感すぎる人』のことで、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が見出したそうです。およそ 5 人に 1 人がこの HSP に該当しますが、病気ではなく、一種の『気質』にあたるそうです。

 この本を読んだきっかけは、自分がこの HSP に該当するかもしれないと思ったことです。読み終えて、いろんなことに納得がいきましたし、社会に出る前にこういう概念を知っていれば……とも思いました。(ただ、HSP が知られるようになってまだ 20 年経っていないので、物理的に不可能なのですが。)それでも、この 20% という数字や適性について知ることができたのは有意義だと思います。これまで自分ひとりの経験のなかから結論めいた、自分なりの答えを出して、それに従って行動してきましたが、その裏づけのようなものを読むことができてよかったと感じました。

 もし世代に関係なく、この HSP が 20% の割合で存在するのであれば、仕事を決めるとか、さらにはもっと前、学校を決めるとき、該当しそうな人たちに読んでほしいと思います。
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2017年03月21日

「校閲ガール」

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宮木 あや子 著
KADOKAWA 出版

 最近ドラマになったと知り、ライトノベルとは知らず、読みました。

 ライトノベルにリアリティを求めるのは筋違いなのですが、それでもやはり、現実味がなければ、物語の世界に入りこむのは難しいと痛感しました。本を読んだこともない入社2年目が、大御所小説家の校閲を任されるって……、しかも、編集者の仕事もついでにしてしまうって……、と気になりだしたら、先の展開を想像して読む気分になれず、表面を滑るように読んで終わりました。

 そのいっぽうで、出版不況については、かなりリアルな溜息が描かれていて、そんな暗い状況を明るくしたいという希望が、こんな主人公を生んだのかもしれません。そのわりには、明るくなれる要素が少ない気がします。わたしにとっては、中途半端な作品でした。
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2017年03月20日

「コンビニ人間」

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村田 沙耶香 著
文藝春秋 出版

 第155回芥川賞受賞作です。わたしにとって、とても共感できる作品でした。

『普通』であることを求められるものの、『普通』とはどういうことなのか、いまひとつはっきり把握できない主人公の古倉恵子は、世間から弾きだされたような生きづらさを感じつつも、コンビニではその一部としてきちんと役割を果たしていると実感ができ、それがタイトルの「コンビニ人間」になっています。

 周囲と同じであることの安心感を必要としなくても、周囲は、周囲と認識を同じにすることを、容赦なく、しかも暗に求めてくるあたり、現代の空気がよく表現されていると思います。その空気感は、売上目標を達成するというゴールに向かって、POPを作成する、在庫を補充する、明るい挨拶を心がけるなどといった具体的かつ詳細な作業にブレイクダウンされているコンビニのプロセスと対比されることによって、とてもリアルに感じられました。

 機会があれば、またこの作家の作品を読んでみたいと思うほど、気に入りました。
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2017年03月08日

「考えるシート」

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山田 ズーニー 著
講談社 出版

 この本の読者層を考えずに読んでしまいました。読者層として最適なのは、学生を中心に、社会人二、三年目くらいでしょうか。もちろん、社会人十年目でも、接客中心で、文章を書いた経験がないという方も含まれると思います。

「書くように言われたから、とりあえず書きました!」というレベルではなく、相手を動かすつもりで何かを書くなら、あるいは何かを話すなら、こういった準備が必要だというサンプル(考えをまとめるシートと使い方)がいくつか掲載されています。

 プレゼンテーション資料を作ったり、企画書を書いたり、そういった実務経験が豊富な方々には、必要のない本です。
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2017年03月07日

「失踪者」

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シャルロッテ・リンク 著
浅井 晶子 訳
東京創元社 出版

『疑心暗鬼を生ず』ということばがありますが、そういった心境に似た思いで登場人物の誰も彼も疑ってしまうくらい、犯人が誰だかわかりませんでした。いかにも犯人といった特徴の人は、下巻に入ってから疑いの目を向けられなくなってしまい、犯人ではないという印象をもつ登場人物に目を向けざるを得なくなったからです。ミステリ作家の思惑どおり「はやく結末が知りたい!」と先を急ぐ始末です。

 それだけでもじゅうぶんに作品として成功しているのですが、この作品では、謎を解く立場にあるロザンナやその周辺人物の心理描写が巧みで、それぞれの望み、焦り、疑い、怒りなどの感情に共感してしまい、犯人探しがさらに難しくなります。

 そして最後に「そういう可能性があったのか!」と唸ってしまう結末が待っています。最後の最後に本音が出てくるあたりは、辛い事情や感情の機微がそれまでの描写を活かしたかたちで描かれ、さらに惹きこまれました。

 登場人物の心理描写が巧みなこと、社会的な問題に触れていること、登場人物それぞれが自分が抱えている問題に向き合い成長していくことなどの要素が以前読んだことのあるアンナ・ヤンソンの「消えた少年」に似ている気がしますが、こちらの結末のほうが、ずっとリアリティがあり、犯人探しの面ではすっきりできました。
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2017年02月26日

「海外ドラマDVD英語学習法」

20170226「海外ドラマDVD英語学習法」.png

南谷 三世 著
CCCメディアハウス 出版

 タイトルのとおり、海外ドラマをDVDで鑑賞して英語を学ぼうというコンセプトです。することは至って簡単。自分が英語を使う場面や興味に基づきドラマを選び、DVDの字幕(英語・日本語)と音声(英語・日本語)を切り替えつつ見るというもの。

 DVDのシーンごとに(エピソードごとではなく)次を繰り返すそうです。
1回目:英語音声・字幕なし
2回目:日本語音声・日本語字幕
3回目:英語音声・英語字幕

 1回目は、一般的にネイティブがドラマを見るのと同じ条件(内容についてまったく知らない状態)で見て、どの程度聞き取れるのか、つまり、聞き取れなかったのは、どういうところなのか、自らの弱点を分析します。著者はこのパートを、テストと読んでいます。

 2回目は、1回目がテストなら、その答え合わせにあたる部分です。ドラマの内容を把握し、自らの理解が間違っていたのなら、なぜ(どのように)間違っていたのか考えます。

 3回目は、自分がわからないと思ったところは都度、再生を一時停止して、意味を調べたりしながら、理解を深め、自分なりの言葉のデータベースを構築します。著者がお勧めしているデータベースは、次のような項目で成り立っています。

−作品のタイトル(ドラマならばシーズン番号とエピソード番号を含む)
−DVDでそのセリフが出てきた時間
−セリフの発言者(誰のセリフか)
−セリフを言われた相手(聞き手)
−英語のセリフ
−DVDの日本語訳
ー英語の直訳

 わたしは、串刺し検索できる辞書ツールを使っていて、そこに自分で作ったユーザー辞書も加えています。その経験から、これらの項目は、著者がデータベース作成後、実際に使いながら、これらの項目をカスタマイズされたのが、なんとなくわかるので、貴重な情報だと思います。

 わたしなら、刑事ドラマかミステリで、この方法を試してみたいです。
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