2018年12月17日

「誰かが嘘をついている」

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カレン・M・マクマナス (Karen M. McManus) 著
服部 京子 訳
東京創元社 出版

 タイトルの「誰かが嘘をついている」の原題は、"One of Us Is Lying" です。この Us は、殺人事件の舞台となったベイビュー高校の生徒を指しています。

 ある放課後、エイヴリーという教師が、ブロンウィン、ネイト、アディ、クーパー、サイモンの 5 人の生徒に居残りを命じて課題を与え、ちょっとしたハプニングをきっかけに生徒を残してその場を離れたあいだに、サイモンが苦しみだし、結果的に死に至ります。ピーナッツアレルギーなのに、ピーナッツオイルが入った水を飲み、ショック状態に陥ったためです。当然ながら、なぜピーナッツオイルが混入したのかが焦点になります。

 ここでわたしに効いたのがタイトルです。嘘をついている生徒が犯人だと思ってしまい、1 番怪しい人物が小説のなかで嘘と呼べるほどの嘘をついていないことから犯人ではないと思いこんでしまいました。しかしタイトルでは、嘘をついた人物が犯人だとはいっていません。また単独犯だともいっていません。

 うまく読者を誘導し、伏線を張り巡らせ、それらを丁寧に回収し、上々のミステリとして仕上がっています。

 そしてその場に居合わせた高校生それぞれが犯人が誰かを考えるなかで、自身の問題に向き合い成長していくことから、青春小説や成長物語としても読めます。

 スクールカーストということばや SNS のない高校生時代を過ごしたわたしにとっては、謎解きと同じくらい青春小説としても楽しめました。
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2018年12月05日

「ちょっと気のきいた大人のたしなみ」

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下重 暁子 著
青萠堂 出版

 著者は、こう書いています。

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 野球のイチロー選手やサッカーのかつての中田選手がなぜ美しいのか。決して人におもねらず自分に厳しいからだ。自分なりの美学を持って、規律をつらくとも守っているからだ。
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 著者も、読者におもねることなく『大人』としての矜持、おしゃれ、気遣いなど多岐にわたって語っています。時代が違うとか、時間がないとか、そういう読者の反論も想定したうえで自分の考えをきっぱり書いている点は好感がもてます。

 ただ、見習いたいと思ったものはそう多くはありませんでした。一番わたしに響いたのは、次です。

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 強いとき、好調なときは、人ははげましを必要としない。失意のとき、弱いときに力になってくれるものこそ大切なのだ。はげましてくれた人の心こそ本物なのだ。好調なときは、そばにいなくとも、失意のとき、不調のとき、見守っている温かい目を持ちたいものだ。
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 人が落ち目になると見るや否や去っていく人の多い今の時代こそ、わたしもこうありたいと強く思いました。
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2018年12月04日

「ステップ」

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重松 清 著
中央公論新社 出版

 主人公の男性が、妻に 30 歳という若さで死なれたあと、ひとりで娘を育てた約 10 年の道のりが描かれています。娘は 1 歳半で母を亡くし、その思い出もなく父親とふたり暮らしです。母のことを知りたいと切望する娘と父親が向き合う場面など、切なくなる描写が続きます。

 悲しく辛い境遇が描かれているとはいえ、登場人物がみな『いい人』ばかりで、娘の成長など希望ももてる物語です。

 生きていくうえで『受け容れて前に進む』ことの大切さが滲みでた小説であるいっぽう、少し現実味に欠けているように感じられました。
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2018年12月03日

「20 歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」

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ティナ・シーリング (Tina Seeling) 著
高遠 裕子 訳
CCC メディアハウス 出版

『普通〜するでしょ』とか『それ常識でしょ』とか普段何気なく聞くことばですが、この本を読んで、もっと『普通』とか『常識』を疑ってもいいと思えました。

 著者は『My Dinner with Andre (アンドレとの夕食)』から、ニューヨーカーについて述べた以下のセリフを引用しています。

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「看守でもあり、囚人でもある。そのため、……自分たちがつくりあげた監獄を出られないし、監獄だと気づくことすらできない」
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 つまり人は、自ら周囲に檻をつくり、そこから出られない言い訳をし、囚われ続けているというのです。この檻を出ることを決め、檻の外にある無限のチャンスを掴みにいけば、すべてが変わるということを若いときに知ってほしいというのが、この本の主旨です。

 しかし自らの檻から出ていくことは、誰にとっても難しいことで、それを乗り越えた実例を著者はこの本で数多く披露しています。

 そのいっぽう解説で、三ツ松新氏は次のように書いています。

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諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授によれば、遺伝子的に、ドーパミン第四受容体の遺伝子内塩基の繰り返しが多いほど「新奇探索傾向」が強く、セロトニンが少ないと「損害回避傾向」が強まるそうです。ちなみにある調査では、新奇探索傾向の強い日本人が 7% であるのに対してアメリカ人は 40%、損害回避傾向の強いアメリカ人が 40% であるのに対して日本人はなんと 98% だったそうです。
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 ここからいえることは、遺伝子が異なる人たちと同じ条件でブレイクスルーを競うのはリスクが大きいということです。ただどんなときでも相手の思考と傾向を知っておくことは大切だと思います。
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2018年12月02日

「こんな女でごめんあそばせ」

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蝶々 著
マガジンハウス 出版

 著者は、かつて会社員として働いていたころ、銀座のホステスにならないかと度々路上で勧誘を受けて夜は銀座で働くようになり、文筆業へと転身したようです。

 すごいなあ……と、口をぽっかり開けてしまうようなスケールの大きさです。たとえば金銭感覚については、こう書かれています。

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チップやタクシー代で 1 万円もらうのは、「あら、どうも」ってスルーなかんじで、10 万円でやや個人的な好意が伝わり「わーい」、封筒入りの 30 万円超えで「ありがとー」と言いつつ、ようやく下心を警戒しだし、100 万円超えると逃げが打ちづらくなるので、かんじよく辞退する (プレゼント価格もこれに準ずる)。
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 ただ、自分は自分、他人は他人ときちんと区別しているだけで、いわゆる薄給で働くような会社員のことを何も知らないわけでも関係ないと思っているわけでもありません。それどころか、そういう人たちにも役に立つものを書きたいと考えているように見受けられます。そういう懐の深さというか人間味に溢れていることと、破天荒に見えるほど人生を楽しんでいることが、彼女のなかで共存しているようです。

 読むと、笑ったり考えさせられたり驚いたり忙しくなるだけでなく、自分の日常とあまりにかけ離れていて、それをちらりとも思い出さないので、ストレス逃れに最適でした。
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2018年12月01日

「東京少女」

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七重 俊 著
アメーバブックス 出版

 表紙が気に入って手にし、2 ちゃんねるから書籍化された本を期せずして初めて読むことになりました。途中、レスの内容について著者が触れるまでそうとは気づかなかったくらいなので、本のかたちに編集されていれば、2 ちゃんねるは苦手でも抵抗なく読めるというのは発見でした。ただ、やはりフィクションとしての評価は考えられないとも思いました。

 ある社会人男性が、クリスマスの夜を一緒に過ごしてくれる 10 代の女性を買ったところから始まり、ふたりの関係を振り返るかたちで男性は 2 ちゃんねるに書きこんだようです。

 リアリティはありますし、先の展開も気になります。でも、そこに話したいという欲求はあっても、読者の視点というものは最初からないように思います。また描写も読者に伝えることを主眼としていないように感じられました。

 自分にも似たような経験ができるかもしれないといった感覚、あるいは友達の話を聞いている感覚を味わうのにはいいかもしれませんが、作品として見るのは厳しいように思います。
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2018年11月30日

「リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円! 」稼ぐ」

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新井 一 著
大和書房 出版

 人口ピラミッドがいびつになりすぎて年金制度の現状維持が無理になったいま、大手企業でずっと働き続けたような方々は別かもしれませんが、老後の不安から逃れられないのが普通になったのではないでしょうか。わたしも、このままずっと働き続けなければ暮らしていけないと思っています。

 そうはいっても、政府が 70 歳まで雇用を継続してくれといったからといって、70 歳まで続けられる仕事は限られているのではないでしょうか。そう思うと複業は有効な手段だと考えるようになり、この本にヒントを求めました。

 会社員が別の仕事をもつという前提に限ってのことですが、すごく納得できた点が 3 点あります。

 1 点目は、好きなこと得意なことに限ること。収入のためにイヤイヤしていては起業する意味がなく、進んでやりたいと思うことに絞る必要があります。

 2 点目は、人の役に立つこと。きれいごとのようにとられがちですが、たとえ月 5 万円を目標とする収入の少額な対価とはいえ、それを支払ってくれる方の視点を忘れないことは大切です。

 3 点目は、すぐには諦めないこと。安定した収入があるわけですから、試行錯誤を重ね、壁を乗り越えていく期間は長めにとれると考えるべきで、収入があるから無理に別の仕事をしなくても……という方向に流れないことです。

 特に 1 点目は参考になりました。
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2018年11月29日

「ジャパン・シフト (仕掛けられたバブルが日本を襲う)」

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原田 武夫 著
徳間書店 出版

 この本が積読状態にあったまま 6 年が過ぎ、日本でのバブル到来予測を 2012 年に書いた著者の予見能力を試す結果になってしまいました。

 バブルは、はじけてみないとわからないといわれますが、少なくとも東京で不動産を見ている限り、不動産バブルは起こったように思います。(著者の予想では、2018 年にはバブルは終わっているはずですが、時期については予想外れになった模様です。)

 第二次安倍内閣が始まったのが 2012 年 12 月、異次元緩和の黒田総裁が就任したのが 2013 年 3 月、それ以降の東京を見ていて、バブルを仕掛けた理由と方法について思うことは、概ねこの著者が書いているとおりです。株価がつりあげられ、相続税が増やされ、不動産にマネーが流れ、不動産価格も上昇しました。

 著者は、バブルだけでなく他のこともすべて論理的に予想している書いていますが、その根拠が少し弱いと感じました。理由は、定量データがないこと、根拠となる定性情報に実名がないこと、複数の原因を安易にひとつに絞ってしまう傾向があること、科学的に証明されていないとされる自然現象を断定していることなどです。

 そうはいっても、説得力がなかったわけではありません。そうかも……と思わせられる視点がいろいろありました。
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2018年11月28日

「イヤシノウタ」

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吉本 ばなな 著
新潮社 出版

 著者が、海燕新人文学賞を 20 代前半という若さで受賞した当時、驚きました。受賞作「キッチン」を読み、観察力というか、人というものがよくわかっているという印象を受けたからです。

 時を経てまた著者のこの文章を読み、人のことがいろいろと見えてしまう自分を受け容れて、そのうえでできることやすべきことを構築されていると感じました。この著者がこの本に書かれているというのでしょうか。

 巻末には、お父さまの吉本隆明氏との対談があります。そこで、『本当のいい小説というのは、その中に必ず半分以上は自分自身が書かれています。他人の名前だったり、違う物語になったりして、表面的には姿を変えていても、「あ、これを書いた人はこういう人なんだ」と、わかる部分が必ず半分は入っている』とお父さまのほうが語っています。

 それを読んでわたしは納得できました。好きな小説の『好き』には、その物語を通して作家を見て、共感したり憧れたり感動したりすることも多分に含まれているのでしょう。

 この作家が書くことによって為したいことは、この本のタイトルにもあらわれています。楽曲のほうの「イヤシノウタ」の忌野清志郎氏の歌詞が冒頭に掲載されていて、この本に収められた文章とよく通じているように思います。
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2018年11月27日

「ノート・手帳・メモが変わる『絵文字』の技術」

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永田 豊志 著
中経出版 出版

 もの覚えが悪くなってから資格試験を受けたとき、マインドマップで挫折したことを思い出しました。マインドマップでポイントをまとめた他人のノートを見たことがあって、それは見ているだけで楽しく、しかも関連事項を次々と思い起こすことができ、わたしには理想のノートに見えました。それで同じようにマインドマップでまとめてみたわけです。

 でも、そのノートを作りあげる時間を捻りだせず、挫折しました。限られたスペースに必要なことを書きこめず、書き直したりしているうちに、過去問対策などが疎かになるのが怖くてやめてしまいました。

 この本に掲載されているノートや手帳のイメージ図は、絵文字が活用されているぶん、やはり見ていて楽しく、脳が活発に動いているように思われます。(著者によると、右脳を活性化する効果があるとか……。)

 絵文字でノートをとるコツが色々紹介されているので、それに従って慣れれば、絵文字を使ったメモを書くスピードもあがるのでしょうが、やはりマインドマップと同じく、わたしにとって高いハードルがあるように思われて、実践には至りませんでした。
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