2018年11月30日

「リスクゼロで小さく起業 会社を辞めずに「あと5万円! 」稼ぐ」

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新井 一 著
大和書房 出版

 人口ピラミッドがいびつになりすぎて年金制度の現状維持が無理になったいま、大手企業でずっと働き続けたような方々は別かもしれませんが、老後の不安から逃れられないのが普通になったのではないでしょうか。わたしも、このままずっと働き続けなければ暮らしていけないと思っています。

 そうはいっても、政府が 70 歳まで雇用を継続してくれといったからといって、70 歳まで続けられる仕事は限られているのではないでしょうか。そう思うと複業は有効な手段だと考えるようになり、この本にヒントを求めました。

 会社員が別の仕事をもつという前提に限ってのことですが、すごく納得できた点が 3 点あります。

 1 点目は、好きなこと得意なことに限ること。収入のためにイヤイヤしていては起業する意味がなく、進んでやりたいと思うことに絞る必要があります。

 2 点目は、人の役に立つこと。きれいごとのようにとられがちですが、たとえ月 5 万円を目標とする収入の少額な対価とはいえ、それを支払ってくれる方の視点を忘れないことは大切です。

 3 点目は、すぐには諦めないこと。安定した収入があるわけですから、試行錯誤を重ね、壁を乗り越えていく期間は長めにとれると考えるべきで、収入があるから無理に別の仕事をしなくても……という方向に流れないことです。

 特に 1 点目は参考になりました。
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2018年11月29日

「ジャパン・シフト (仕掛けられたバブルが日本を襲う)」

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原田 武夫 著
徳間書店 出版

 この本が積読状態にあったまま 6 年が過ぎ、日本でのバブル到来予測を 2012 年に書いた著者の予見能力を試す結果になってしまいました。

 バブルは、はじけてみないとわからないといわれますが、少なくとも東京で不動産を見ている限り、不動産バブルは起こったように思います。(著者の予想では、2018 年にはバブルは終わっているはずですが、時期については予想外れになった模様です。)

 第二次安倍内閣が始まったのが 2012 年 12 月、異次元緩和の黒田総裁が就任したのが 2013 年 3 月、それ以降の東京を見ていて、バブルを仕掛けた理由と方法について思うことは、概ねこの著者が書いているとおりです。株価がつりあげられ、相続税が増やされ、不動産にマネーが流れ、不動産価格も上昇しました。

 著者は、バブルだけでなく他のこともすべて論理的に予想している書いていますが、その根拠が少し弱いと感じました。理由は、定量データがないこと、根拠となる定性情報に実名がないこと、複数の原因を安易にひとつに絞ってしまう傾向があること、科学的に証明されていないとされる自然現象を断定していることなどです。

 そうはいっても、説得力がなかったわけではありません。そうかも……と思わせられる視点がいろいろありました。
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2018年11月28日

「イヤシノウタ」

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吉本 ばなな 著
新潮社 出版

 著者が、海燕新人文学賞を 20 代前半という若さで受賞した当時、驚きました。受賞作「キッチン」を読み、観察力というか、人というものがよくわかっているという印象を受けたからです。

 時を経てまた著者のこの文章を読み、人のことがいろいろと見えてしまう自分を受け容れて、そのうえでできることやすべきことを構築されていると感じました。この著者がこの本に書かれているというのでしょうか。

 巻末には、お父さまの吉本隆明氏との対談があります。そこで、『本当のいい小説というのは、その中に必ず半分以上は自分自身が書かれています。他人の名前だったり、違う物語になったりして、表面的には姿を変えていても、「あ、これを書いた人はこういう人なんだ」と、わかる部分が必ず半分は入っている』とお父さまのほうが語っています。

 それを読んでわたしは納得できました。好きな小説の『好き』には、その物語を通して作家を見て、共感したり憧れたり感動したりすることも多分に含まれているのでしょう。

 この作家が書くことによって為したいことは、この本のタイトルにもあらわれています。楽曲のほうの「イヤシノウタ」の忌野清志郎氏の歌詞が冒頭に掲載されていて、この本に収められた文章とよく通じているように思います。
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2018年11月27日

「ノート・手帳・メモが変わる『絵文字』の技術」

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永田 豊志 著
中経出版 出版

 もの覚えが悪くなってから資格試験を受けたとき、マインドマップで挫折したことを思い出しました。マインドマップでポイントをまとめた他人のノートを見たことがあって、それは見ているだけで楽しく、しかも関連事項を次々と思い起こすことができ、わたしには理想のノートに見えました。それで同じようにマインドマップでまとめてみたわけです。

 でも、そのノートを作りあげる時間を捻りだせず、挫折しました。限られたスペースに必要なことを書きこめず、書き直したりしているうちに、過去問対策などが疎かになるのが怖くてやめてしまいました。

 この本に掲載されているノートや手帳のイメージ図は、絵文字が活用されているぶん、やはり見ていて楽しく、脳が活発に動いているように思われます。(著者によると、右脳を活性化する効果があるとか……。)

 絵文字でノートをとるコツが色々紹介されているので、それに従って慣れれば、絵文字を使ったメモを書くスピードもあがるのでしょうが、やはりマインドマップと同じく、わたしにとって高いハードルがあるように思われて、実践には至りませんでした。
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2018年11月26日

「幸福論」

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B・ラッセル (Bertrand Russell) 著
堀 秀彦 訳
KADOKAWA 出版

 幸福論は数多くありますが、今回はラッセルです。章立てを見るだけで、読書の半分が終わってしまうかと思うほど、整理されています。幸福になるために取り除かなければならない不幸の原因 (第 1 部) と幸福をもたらしてくれるもの (第 2 部) は、次のとおりです。

第 1 部 不幸の原因
- 何がひとびとを不幸にさせるのか?
- バイロン風な不幸
- 競争
- 退屈と興奮
- 疲労
- 嫉妬
- 罪悪感
- 被害妄想
- 世論に対する恐怖

第 2 部 幸福をもたらすもの
- いまでも幸福は可能であるか?
- 熱意
- 愛情
- 家庭
- 仕事
- 非個人的な興味
- 努力とあきらめ
- 幸福な人間

 古典だけあって、性役割の押しつけを前提とした表現もありますが、全体において鋭い観察眼だと敬服せざるを得ない内容です。

 第 1 部で少しわかりにくかったのが、『バイロン風な不幸』です。なんのために生きるのか……この世に、生きるに値するようなものはない……そういう考えのことです。読んでいて類似していると思ったのは、現代のいわゆる『自分探し』です。そういう青年たちには、生きていくだけで精いっぱいという状況に身を置いてみるよう勧めています。時代が変わっても、生きていくこと自体が脅かされなければ、生まれる悩みなのかもしれません。

 第 2 部でわかりにくかったのが、『非個人的な興味』です。これは、仕事などの事情に関係のない、自然と内から湧きでる興味をもって楽しめる趣味のようなものを指しています。思うに『熱意』に共通する部分もあるように思います。「いっそう多くの事物に興味をもてばもつほど、それだけ幸福の機会を多くもつ」と書かれてあります。

 全体を通して感じたのは、幸福は、自らを変えて手に入れるものであり決して待っているものではないもの、自分の内面と向き合いながらも外に向かってつながりをもたなければ実現できないものだということです。じゅうぶんな説得力がありました。
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2018年11月25日

「し」

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原田 宗典 著
幻冬舎 出版

「し」と読む漢字にまつわる話題を集めたエッセイです。少しかたい話題からやわらかい話題までいろいろです。

 かたいほうの話題の「詩」では、著者が好きな詩論が引用されています。

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詩にもいろいろの種類があると思う。僕の詩は、どういう詩か知らないし、人によっては詩とは云えないと言うかもしれない。自由詩というべきものか。僕は詩のことを特別に研究したものではない。ただ何かかいている内に、だんだん調子が高くなり、羽の生えたコトバが生れる。その時おのずと詩が生れるのだと自分は思っている。少くも僕はそういう詩を書くのだ。散文は足で地面の上を歩くようなものだ。はう時も、歩く時も、馳ける時もある。しかしまだ地面からはなれることが出来ない。飛行機が滑走していて、地面から離れられないような時、まだ詩は生れない。しかし地面からはなれた時、詩になる。少くとも自分ではそう思っている。人間の挙動も詩になると舞踏になると思う。言葉に羽が生えると詩になる
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 わたしは詩を読むことがほとんどないのですが、空よりも地べたが好きなのかもしれません。正確には、地べたを這う以外、能がないように思います。

 やわらかいほうの話題の「仕」では、執筆のために熱海に泊まったときの様子が書かれています。日本の作家、学者、芸術家の中でもごく限られた人たちが宿泊を許される施設だそうで、仮名で登場します。三島由紀夫、川端康成、志賀直哉などの文豪が使った調度に触れたときの著者の感動は、挙動不審ともとれて、和みます。豪快な朝食など意表をつく体験談でした。
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2018年11月24日

「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」

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ミック・ジャクソン 著
田内 志文 訳
東京創元社 出版

 帯などに『寓話』とあるのですが、わたしには教訓や諷刺といった要素はあまり感じられませんでした。以下の 8 つが収められた短篇 (連作) 集ともとれますが、翻訳家は、どちらかというと中篇小説のように捉えたのかもしれません。

 そう思った理由は、邦題です。原題は、"Bears of England" で、「イギリスの熊 (たち)」ぐらいの意味です。それに少し情報を加えたのは、8 篇の並びとも関係があります。

- 精霊熊
- 罪食い熊
- 鎖につながれた熊
- サーカスの熊
- 下水熊
- 市民熊
- 夜の熊
- 偉大なる熊 (グレート・ベア)

 タイトルにあるとおり、イギリスでは 11 世紀に熊が絶滅したのですが、その原因は狩猟だったようです。そこから推察するに、熊が現代のトキのように大切にされていた時期もなかったでしょうし、また絶えて久しい熊の存在が、現に目の前に存在する動物たちに比べ、妖精といった存在に近いと捉えられても不思議ではないように思います。

 実は、そう思えるような不思議なストーリーがこの本にはあります。虐げられ、悲しい思いをする数々の熊が、文章と挿絵で描かれています。熊を人と見ることもできますし、読者それぞれがストーリーを自由に見ることができる作品だと思います。

 読まれるときは、最後の訳者あとがきから読まれることをお勧めします。
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2018年11月23日

「頭がいい人、悪い人の<言い訳>術」

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樋口 裕一 著
PHP 研究所 出版

頭がいい人、悪い人の話し方」がミリオンセラーになって、この本も書かれたようです。2 冊まとめて買ってあったので、失敗しました。

 読まなくてもいいかと思っていたのですが、ある方の相手をしているとき、ふと手にしてしまいました。期日に間に合わなかったとき、いつも「体調が良くないから」か「昔ならできた」のいずれかで言い訳し、決まって問題を小さめに伝える方がいるのです。この本によるアドバイスは、次のとおりです。

 体調の言い訳には、本当に心配しているところを見せて、病院で検査を受けるよう勧めるのがいいそうです。もし仮病なら、プレッシャーを感じてこの言い訳が減ることが期待できると著者はいいます。

 昔ならできたと見栄を張る人には、あまり追及せずに、温かく見守るべきだといいます。ただ、親が子供に勉強を教える際の言い訳を想定しているので、仕事でのケースに当てはめるのは無理があると感じました。

 過少申告ですませようとする人には、情報は正確に示さないと信用を失うことを教える必要があり、たとえば 15 分遅れるといいながら 1 時間遅れてくる人の場合、15 分待って帰ってしまうといった毅然とした態度をとるよう勧めています。

 最後のケースは、参考にさせていただき、わたしにとっての面倒な人にも態度で示したいと思います。
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2018年11月22日

「覚えていない」

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佐野 洋子 著
新潮社 出版

「100 万回生きたねこ」を描いた著者が絵の話題に触れていて、それには強く頷いてしまいました。

 ひとつは、ナイーヴ・アートです。この本で、『ナイーヴ・アート』ということばを知ったのですが、こう書かれています。

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 私は美術学校行って、遠近法なんかもデッサンなんかも習って、構成なんかも理屈をこねたりしたので、きっと生意気になっちゃっていると思う。そして、どっかのおばあさんが描いた遠近法なんかなくてデッサンなんかも知らなくて、ただ描きたいから描いているのよという絵を見ると、ぎくっとして、胸の真中ニコニコしながら、すごく反省してしまい、本当に絵が好きというもとのもとのところにぐいーっと引き戻されて、本当は絵を描くことは嬉しくて楽しくてやめられないものなのだと思って、オロオロもするのである。
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 これを読んで思わず、損保ジャパン日本興亜美術館に行ったとき、グランマ・モーゼスを見て訳もわからず楽しくなってしまった感覚を思い出しました。

 もうひとつは、著者に向かって、自分は絵を描くために勉強をしていると自慢げに「六十年代のポルシェっていうとコーンナに資料買ってくるんだよ」といった沢野ひとしのことです。

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サワノヒトシがコーンナいっぱいの資料見てポルシェ描くと、ボタモチみたいなポルシェを描く。そんんで横にポルシェなんて字書く。コーンナ資料をコーンナに見ても、全然ポルシェに見えない事は恐しい。見えるのはサワノヒトシだけである。
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「うまいこというなあ」と唸ってしまう表現です。

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2018年11月16日

「不思議なハンコ屋―山本印店物語」

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山本 桃仙 著
マキノ出版 出版

 東京近郊では、とても有名なハンコ屋さんの店主が書いた本です。このハンコ屋さんが有名なのは、ここでハンコを作ると運が開けるという評判と独特な可愛い書体です。

 開運について、著者はこう語っています。
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その人の人生の流れの中で、自然に僕のハンコを持つタイミングが訪れる、ということはあるでしょう。ハンコを作ったから運勢が変わるのではなく、先に運勢の流れがそういうふうに変わってきたから僕の店にやって来るということです。ハンコが先か、運勢が先か。運勢のほうが先なのです。
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 さらに、こうもいっています。
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生まれたときの運勢に合った生き方、その人自身に見合った生き方をしていて、現在使っているハンコがそれをしっかりサポートしていると感じられるときは、ハンコを作り替える必要はありません。
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 著者は、来店予約をとった方に、いま持っているハンコを持ってくるようにいい、そのハンコから新しく作り替えるべきか判断し、不要であればハンコを作らないそうです。

 著者には何かが見えているのでしょう。そして、売上第一に考えないから、山本印店のハンコに運を開く力が備わっているように見えたのかもしれません。
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