
レーモン・ルーセル (Raymond Roussel) 著
坂口 恭平 イラスト
國分 俊宏 訳
伽鹿舎 出版
わたしの想像を超えた作品でした。まず、タイトルに『アフリカ』ということばがあるにもかかわらず、架空の国の架空の国王の戴冠式から物語は始まります。それでも、やはりアフリカ大陸のどこかだとイメージして読み進めるのですが、舞台がアフリカだろうとどこだろうと関係ないような非現実的な描写が続き、まるで大きな見世物小屋を次から次へと覗いているような感覚に見舞われます。しかも、眼の前に繰り広げられる戴冠式のあれこれを観察している『私』が誰なのか、なぜ国内の事情に通じているのか、明かされるのは、中盤になってからです。
物語の展開だけでなく、形式面から見ても、変わっていて抄訳です。さらに、イラストも超のつく個性派で、国籍や人種を超えています。帯には『摩訶不思議な世界』とありましたが、まさにそんな印象です。作家紹介では、1877年生まれ1933年没となっていますが、書かれた時代も感じさせません。
時代や国籍や小説の形式といった枠を何も感じさせない、わたしの理解を遥かに超えた作品で、SFすら苦手なわたしには、消化しきれませんでした。