
北村 薫 著
新潮社 出版
「スキップ」と同じく、時を巡って不思議なことが起こる作品です。
ただ「スキップ」と違って、登場人物の感情に寄り添うことができました。その不思議なできごとが、わたしの身にふりかかったとしたら、登場人物と似たようなことを感じ、似たような行動をとったに違いないと思えました。
それ以外にも「スキップ」より「リセット」のほうを好ましく思った理由があります。
時が、第二次世界大戦中、戦後、現代と移り変わっていくなか、それぞれの時代で鍵となるモノや歌などが登場し、時代と時代が結びつけられるような仕掛けになっているのですが、そのつながりを辿っていくことが楽しかったことがひとつです。
もうひとつは、辛く厳しい戦時下の淡い恋が、長い年月を経て実るという結末で、読後感が爽やかだったことです。
ここでの「リセット」は、ゲーム慣れした子供たちが死を軽く「リセット」と呼ぶのとは違って、果たせなかった夢を果たすもう一度のチャンスのように、耳に心地よく響きました。