
シェーン・スノウ (Shane Snow) 著
斎藤 栄一郎 訳
講談社 出版
著者は、ニューヨークを中心に活躍するアメリカ人ジャーナリストです。短期間で頭角をあらわしトップクラスにあがった人たちを取材して、その共通点、つまり近道 (shortcut) ならぬ smartcut をどう実現したかを書いています。
成功するには失敗がつきものといわれますが、その失敗について興味深い研究結果が紹介されていました。ある病院で新しい手術法を導入したときのことです。新しい方法の手術に失敗した医師は、さらに失敗する傾向があり、失敗した医師の同僚はその後成功を重ねる傾向がありますが、同僚が成功しても自分の成功率には影響を与えません。
これらは、対処メカニズム (問題に対処するために機能するしくみ) が関係しているそうです。(『帰属理論』と呼ばれます。) 人は、成功や失敗を説明する際、できるだけ自分に都合のいい原因に結びつけたがります。つまり自分が失敗しても、自分に落ち度があったと考えず、都合のいいほかの理由を見つけてしまうため、失敗から学べないのです。いっぽう同僚の失敗は客観的に分析できるため、失敗の原因をつきとめ、自分の成功に結びつけることができるというわけです。
成功したければ、この理論を意識して、自分の失敗と他人の失敗を区別せずに分析し、次のチャレンジに役立てればいいわけです。
また人脈についても、もっともなことが書かれてあります。人脈を広げようと、いろいろな人とコンタクトを取るのではなく、たくさん人脈を持っていそうなひとりとコンタクトを取るよう勧めています。しかも人との交流において目指すべきはギブ&テイクではなく、ひたすらギブを続けてファンをつくり信頼に満ちた絆をつくることです。利己的になると成功することはできないというわけです。
どれも頷ける内容でしたが、桁外れに驚いたことがひとつありました。より良いものを目指す際に欠かせない第三者からのフィードバックについて『誰にでも、ネガティブなフィードバックをもらったとき、「ああ僕はダメだ」と人格否定として受けとめる脳内スイッチがある。それをぱちんと切ってしまう術を覚えるのだ』と書かれてあったことが意外でした。
わたしは、フィードバック=人格否定のように受け取らない傾向が強く、そう受け取る人は難しいなあと常々思っていましたが、自分が少数派だとは知りませんでした。考えを改めたいと思います。