
H・P・ラヴクラフト (Howard Phillips Lovecraft) 著
南條 竹則 編訳
新潮社 出版
科学がすべてを明らかにしてくれると思って生きている多くの現代人とは違って、これらの作品をラブクラフトが書いた時代の大半の人には、地球ができる前から存在する生命体といった人智の及ばない領域を容易に信ずることができる土壌があったのだと思います。
つまり、暗闇を見つけるのが難しいような暮らしをしているわたしが、ラブクラフトが作り上げた怪奇世界に惹きこまれることはないだろうと思って読み始めましたが、結果的に、その予想は裏切られました。
以下の七篇のうち「暗闇の出没者」では、謎の生物が地球の外から来たことや高度な科学技術を有することなどが事細かに描かれ、その地球外生命体との接触に対し想像が膨らみました。怪奇小説と呼ばれても、SF らしさもある作品だと思います。
−異次元の色彩
−ダンウィッチの怪
−クトゥルーの呼び声
−ニャルラトホテプ
−闇にささやくもの
−暗闇の出没者
−インスマスの影
また「インスマスの影」は、語り手が自らの恐ろしい体験を披露しているのですが、その体験を凌ぐ恐ろしい事実が最後に明かされます。伏線が張られて回収されるさまは、ミステリーを思わせます。
初めてラヴクラフトを読みましたが、思いのほか楽しめました。