2020年01月31日

「酸素は鏡に映らない」

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上遠野 浩平 著
講談社 出版

 窓付きの装丁が気に入って購入した本です。中身に対する印象は、独特な世界観のなかに入りこめず、消化不良を起こしてしまった感じでした。

 それでシリーズの途中から読んだのかもしれないと調べてみると「ブギーポップ」というライトノベルシリーズを読んでおくべきだったようです。このシリーズ全体を流れるテーマが何かはわかりませんでしたが、この本のテーマはタイトルにある『酸素』です。

 わたしたち人間にとっての『酸素』の捉え方が、一般的イメージとは少し異なっていました。まるで預言者かのような物言いをする柊という登場人物はこう語っています。
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酸素とは触媒だ。
モノを燃やす……そういう働きをするものだ。生命とは、どんな小さなものであっても、エネルギーを燃焼させて、生きている……だからモノを燃やすモノとしての酸素が必要なのだ。
つまり……酸素とは……危険なものだ。
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 酸素を必要不可欠とするのではなく、危険物としてみなす考えが新鮮でした。そして、この柊と会話を交わしている健輔という少年が、酸素が危険なら毒みたいなものかと問いかけ、そのとおりだと柊は答えます。
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人間は……その成分のほとんどは、毒でできているのと同じだ。
他を取り込み、毒で溶かし、燃やし、己のものに造り変えていくことが、生命の本質――呼吸レベルから、それは身に染みついている……それは、人が人を求めるときでも、同じことが……刺激物が、毒が、つねにそこには存在している……。
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 喩えがわかりやすいかどうかは別として、人の性質として、そういう面もあるように思います。
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2020年01月17日

「夜中にジャムを煮る」

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平松 洋子 著
新潮社 出版

 この本を読み、著者は料理研究家だと思ってしまいましたが、エッセイストだそうです。わたしがそんな誤解をしてしまうほど料理満載の一冊です。

 わたしの場合、料理ができないのでレシピを参考にするということはないのですが、道具類については心惹かれるものがありました。ひとつは、お米を炊くための鍋『黒楽御飯鍋』で、美味しいご飯が炊けそうなうえ見た目が気に入りました。著者同様わたしも炊飯器を手放せないか考えたことがあり、実行に移すおりには参考にしたいと思います。

 もうひとつは、蒸し野菜が上手にできるというドイツ製『クリスピー・カバー』です。外側がカリッ、内側がしっとりジューシーに焼き上げられるそうで、野菜以外にも幅広く使えそうなのですが、売り切れ状態で手に入れるのは難しそうでした。

 料理にあまり関心を持てないわたしには『豚に真珠』といった感じの本でした。
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2020年01月16日

「無から生まれた世界の秘密 宇宙のエネルギーはなぜ一定なのか」

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P. アトキンス (Peter Atokins) 著
渡辺 正 訳
東京化学同人 出版

 物理学も数学も苦手なわたしがこの本を最後まで読めたのは、『数式はみな本文から落とし、巻末の注記に押しこめ』るという方針のもと、言葉 (だけ) で自然界の法則が説明されていたからです。物理学関連の書籍はどれを読んでも数式を理解できずに前に進めなくなっていたので、助かりました。また、擬人化された説明も読みやすく感じられました。

 たとえば、宇宙誕生の際、わずかなこと (not much) が宇宙を生み、造物主 (神) のようなものは、手抜き (怠慢、サボり indolence) をし、同時にアナーキー (無政府状態、無秩序 anarchy) も大きな要因となり、不可知 (知りようのないこと、無知 ignorance) が手助けしたと著者は考えています。

 キーワードが『わずか』『手抜き』『アナーキー』『不可知』だとわかりますが、相互の関係は漠然としてよくわからない説明です。そこを著者は、さまざまな理論・原則を紐解きながら、本書の終わりには読者がそのとおりかもしれないと感じるようなところまで持っていきます。

 ひとつ例をあげると、光の反射の法則や屈折の法則などはどれも、『光は、出発点から終点まで最速で着ける経路をたどる』と言い換えることができるそうです。

 光の動きに先述の『アナーキー』を当てはめ、光が出発点から終点まで無秩序に (勝手気ままに) 動いたと仮定します。そうすると、電磁波である光は、それぞれ別ルートで届いたとき電場が互いに打ち消しあう結果になりますが、例外的に打ち消しあわないのが、最短ルートをとった光だというのです。これを著者は、『アナーキー』がこの『光は、出発点から終点まで最速で着ける経路をたどる』という法則を生んだのだと述べています。

 こうして多種多様な法則を例に、『わずか』『手抜き』『アナーキー』『不可知』に触れていくと、著者の理論の核が薄っすらと見えてきたような気がしたのが不思議でした。
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2020年01月15日

「ほのぼの英語:1 コマ漫画で親子の日常英会話」

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デイビッド・セイン (David Thayne)/堀 道広 著
東京書籍 出版

 わたしの英語は、仕事で使う英語であれば何とかなるいっぽう、日常的な会話となれば手も足も出ないレベルです。だから、子供を対象としたこういう本は意外に勉強になりました。

 一番気に入ったのは短いクイズです。おもしろいものを抜粋しました。まずは、子どもと縁がなければ知ることができないものから。

Q1. 別れのあいさつで See you later (またね) のあとにふざけて「ある動物の名前」をつけて言うことがあります。さて、何の動物?

A1. alligator
See you later alligator. (じゃあね) と言われたら、After a while crocodile. (うん、バイバーイ) と返すのがお約束です。

Q2. 「いないいない、バァ〜」を英語で言うと?

A2. Peek a boo!
「ピーカーブー」と、最後の「ブー」に力を入れて面白い顔をすればバッチリ!

Q3. 英語で「おんぶして」は Give me a _____back. (_____back で 1 語) と言います。_____に入るのは何という単語でしょう?

A3. piggy
Give me a piggyback. で「おんぶして」。piggyback で「おんぶ」「肩車」です。

Q4. 「おしっこ」が pee なら、「うんち」は何て言う? (注意:人前でこんな言葉を使って OK なのは、子どもだけですよ!)

A4. pee が「おしっこ」、poo が「うんち」。「うんちしたい」なら、I want to go poo. です。

Q5. 「お気に入りのぬいぐるみ」を binky と呼びますが、それは「持っていると安心できるもの」ということで、ある単語が元になっています。それは何?

A5. blanket
blanket (毛布) の幼児語を blankie といい、それが元になって blankie→binky となったようです。

次は、子どもに限定しない話題ですが、わたしにとって目新しかったものです。

Q6. 「チャックが開いてるよ!」とは言いにくいもの。これを最短で伝えるアルファベット 3 文字は?

A6. XYZ
Examine your zipper. の略。「あなたのチェックをよく確認しなさい」という意味です。XYZ と言えば OK! また、Check your zipper. とも言います。

Q7. 英語では「しその葉」を _____ plant と言います。_____ にはアメリカ人が大好きな食べ物の名前が入りますが、さて何でしょう?

A7. beefsteak plant
英語ではなぜか「しその葉」を beefsteak plant と言いますが、これがどんな植物か知っているアメリカ人はほとんどいません。

 日々の暮らしに必要のない言語を習得するのは、やはり難しいものです。
posted by 作楽 at 19:00| Comment(0) | 和書(英語/翻訳) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする