
澤田 幸展 著
柏艪舎 出版
タイトルにある「囚われ」を著者は『心理社会的欲求に突き動かされること』と定義しています。欲求といえば、三大欲求ということばを思い浮かべますが、著者は、農業革命、産業革命、情報革命を経て三大欲求が、(1) 承認/所属欲求、(2) 金銭/交換欲求、(3) 支配/コントロール欲求という心理社会的欲求へとバージョンアップしたと述べています。
(1) から (3) それぞれは、ことばどおりの意味で、特に (2) は昔、つまり昭和の時代からずっとあったように思ういっぽう、情報革命を機に、つまり SNS など承認を得ることができるツールの登場以降、(1) の欲求が以前より強まったのではないかと思いました。
さらに承認欲求について著者は、日本人の場合「裏の承認」に対する欲求が強いと述べています。日本人は周囲の目を強く意識するため、承認を必要とするいっぽう、能力や業績が称賛されるとか個性が尊重されるといった「表の承認」をあまり歓迎せず、和や規律ないし序列を大切にしている姿、奥ゆかしさや陰徳が良しとされる「裏の承認」を優先的に求める傾向が強いと説明しています。
わたしの目には、それは屈折した心理に映りますが、それゆえに欲求がエスカレートし、どんどん欲求に囚われていく気がします。たとえば仕事において、業績をあげるには能力も努力も必要とされます。いっぽう、和や気遣いなどで認められるには気を張って気配りを絶やさなければ実現可能に思えるからです。誰にでもできそうだからこそ、欲求に囚われやすくなるのかもしれません。
そうした欲求に過度に囚われることなく、ほどほどに囚われながら過ごすための方法が本の終わりのほうで紹介されているので、欲求に囚われ過ぎかもしれないと思われる方には参考になると思います。