2020年08月22日

「ぶり返す世界恐慌と軍事衝突」

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副島 隆彦 著
祥伝社 出版

 2012 年出版の本書の予測を読むのは意地悪なのですが、いまのパンデミックを考えると、戦争景気に魅力を感じる方々も増えるのではないかと、素人ながら心配になり、タイトルの「軍事衝突」を見て、この本を引っぱり出しました。

 著者は、わたしたちは歴史から学ぶべきで、@ 大災害が来て、A 大恐慌が来て、そして B 戦争が来るというパターンを忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。歴史を見るとその繰り返しだから……というのがその理由で、これは歴史の法則であり、運命だと言っています。

 いまの新型コロナは、ひとつの大災害だと思います。このあと大恐慌がくるのか、この大災害を乗り越え恐慌を避ける知恵が現代の各国のリーダーにはないのか、注視したいと思います。

 そしてもう 1 点、景気の動向を予測するのは、誰にとっても難しく不可能といってもいいのかもしれないと、あらためて思いました。著者による、60 円台まで円高が進むという予測も、さる大手金融機関が破綻するという読みも、東京都心のタワーマンションさえ価格が下落するだろうという見込みも、的中していたとは言い難いと思います。

 恐慌が来る可能性を無視することもなく、景気動向予測に振り回されることもなく、過ごしたいと思います。
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2020年08月21日

「この英語、訳せない! head は頭? 顔? 首?」

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越前 敏弥 著
ジャパンタイムズ出版 出版

 この本のサブタイトルになっている『head』の項では、"The man's head was gray and red." という例文が紹介されています。

 head は、顔も含めた、首から上の部分を指します。日本語にすれば『頭部』ですが、やや堅苦しいので『顔』と訳したほうが適切な状況もあると著者は言います。また、『生首』ということばが頭部全体とほぼ同じ意味であることからわかるように『首』という訳語を用いるのもひとつの方法だと説明されています。

 先の例文は小説からの引用だそうですが、白髪で赤ら顔だということを、まわりくどく説明しているそうです。それを翻訳家として著者は『頭と顔では、灰色と赤が幅を利かせている』と訳し、原文よりわかりやすくしすぎるのを避けたそうです。

『head』以外の項で参考になったのは、『insight』と『floor leader』です。

『insight』は、わたしが持て余してしまう単語で、『洞察』などが並ぶ英和辞書を見ても答えを見つけられません。著者は、オンライン辞書サイト「dictJugller.net辞遊人」には、「ひらめき」「知識」「感覚」といった過去の訳語が掲載されていて参考になると紹介するいっぽう、自らの訳も披露しています。

-it seeks to order chaos and gain insight into life
混乱を秩序へ変え、人生についての深い知恵を与えてくれる

-to gain insight into how this news will be received
はたしてこれをどう受け止めるのか、参考にしたい

-Your insights during our last conversation helped make this night possible.
最後に会ったときのあなたの意見のおかげで、この夜の集いが実現したのですから。

『floor leader』は、辞書に『院内総務』と載っています。しかし『院内総務』が米国議会においてどういった立場の人物を指すのか、わたしは知りませんでした。本書では、以下のように説明されています。
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 2 大政党である共和党 (Republican Party) と民主党 (Democratic Party) のどちらにも、党首にあたる役職はありません。そこで、連邦議会でも州議会でも、両党の代表をつとめるのがこの院内総務です。上院 (Senate) でも下院 (House of Representatives) でも、多数党の院内総務が majority leader、少数党の院内総務が minority leader と呼ばれます。多数党・少数党は各院の議席数で決まりますから、かならずしも大統領の出身政党が多数党というわけではありません。

 院内総務は両党の代表であると書きましたが、厳密に言うと、下院では多数党の最有力者が議長をつとめるので、多数党の院内総務は実質的にはナンバー 2 にあたります。また、連邦議会の上院では、副大統領が議長を兼任するならわしとなっています。
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 どの項も、小説などに登場した具体例をもとに説得力のある説明がされていて、日本と欧米の言語や文化の違いに興味をもてました。
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