2020年09月26日

「医学統計の基礎のキソ 3」

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浅井 隆 著
アトムス 出版

「医学統計の基礎のキソ 2」に続いて、シリーズ最終にあたる第 3 巻を読みました。カバーされている内容は、次のとおりです。

−選択基準 (inclusion criterion) と除外基準 (exclusion criterion)
−ランダム (無作為) 抽出区分 (random allocation)
−ランダム化比較研究 (randomized controlled trial:RCT)
−パワー分析 (power analysis)
−αエラー (α error) とβエラー (β error)
−ホーソン効果 (Hawthorne effect)
−プラセボ効果 (placebo effect)
−スタディグループ (study group) とコントロールグループ (control group)
−盲検化 (blinding)/マスキング (masking)
−二重盲検法 (double blind method) と一重盲検法 (single blind method)
−二重盲検ランダム化比較研究 (double-blind randomized controlled trial)
−コンソート声明 (CONSORT statement/Consolidated Standards of Reporting Trials statement statement)

 この中のパワー分析の power とは検出力を指しています。『差がある』のを、仮説検定で『有意差あり』として検出できる能力です。0.8 の場合、80% の確率で正しく有意差があると検出できます。

 これに関連する用語に、αエラーとβエラーがあります。前者は、『差がない』のに、仮説検定で『有意差あり』と誤った判定をすることで、後者は逆に『差がある』のに、仮説検定で『有意差なし』と誤った判定をすることです。

 医療で用いられる統計は、患者の治療に結びつくだけに、信頼性に関する情報は論文においても常にチェックするよう勧められています。実践的なシリーズ書籍だと思います。
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2020年09月25日

「秒速で人が動く数字活用術」

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小早川 鳳明 著
PHP 研究所 出版

 数字をビジュアル化することは、ビジネスパーソンが日常的に行なっていることだと思いますが、ありがちなのが、ビジュアル化自体に満足してしまい、目的に沿わせることを忘れてしまうことです。

 この本には、わたし自身が実践していることが正しいと確認できたことと、これまで実践してこなかったけれど今後取り入れたいことがありました。

 前者は、オーディエンスの設定と漏れの防止です。ビジュアル化に限らず、何かを見せるとき、わたしはオーディエンスを広げ過ぎず、決定権をもった方々に限定することを心がけています。著者は『説得する相手の顔をふたりだけ思い浮かべる』ことを勧めています。たとえば、会長と社長、社長と副社長といった、ふたりです。

 漏れの防止について著者は、人を動かすためには、抜け穴のない論理的な説明が必要だとし、抜けも漏れもないロジックツリーの作成を勧めています。ロジックツリーは、具体的には次のようなものです。

20200925「秒速で人が動く数字活用術」1.png

 後者のわたしが実践できていなかったことは、データのマスキングと相手がよく知っている数字の前段利用です。

 わたしは、データをすべて見せるようにしていましたが、著者は、自分の主張に直接関係しない数字は、敢えて見せない (マスキングする) ことを勧めています。たしかに、アウトプットがすっきりとし、どこを見てもらいたいのかが明確になります。

 また、相手を動かすために信頼を得る手段として、自分が主張したい数字の前段に、相手がよく知っている数字をもってくることは有効だと思えました。

 相手を説得するという目的を果たすために数字をどう使うかという視点では、参考になるメソッドが紹介されていると思います。
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2020年09月24日

「失礼な日本語」

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岩佐 義樹 著
ポプラ社 出版

 これまでわたし自身が明確に疑問を提示できないものの、どうすればいいのか迷ってきた問題が取りあげられていて、読み甲斐がありました。

 ひとつは『いただく』の多用です。以下の@とAは、どちらが正しいでしょうか。

@ 本日ご来店くださったかたにはもれなく記念品をさしあげます。
A 本日ご来店いただいたかたにはもれなく記念品をさしあげます。

 答えは、@です。『〜くださる』は尊敬語で、『〜いただく』は謙譲語です。この文章は、店側から客へのメッセージで、文中の『かた』は、客と考えられます。客が主体になっているのに謙譲語を使っているため、誤りだそうです。

 ただ、客に向かって『ご来店くださり、ありがとうございます』と言っても、『ご来店いただき、ありがとうございます』と言っても、正しい敬語です。そこから、『ご来店いただいたかた』という誤りが生まれるのではないかと著者は推測し、さらに、相手が主語の『してくださる』ではなく自分が『していただく』という言葉を使うのは、無意識に自分中心になっているのかもしれないという見解を述べています。

 この無意識に自分中心になっているという指摘は、わたしにとって納得のいくものでした。相手を敬う気持ちは薄れ、自分がへりくだっていれば無難という流れがあるのかもしれません。

 もうひとつは、『です・ます体』では形容詞の扱いが難しいことです。この『難しい』も形容詞ですが、これを『です・ます体』で丁寧にするとき思い浮かぶのは『難しいです』や『難しかったです』などですが、稚拙な感じが否めません。

 ではどう書けばいいのでしょうか。正しくは『難しゅうございます』ですが、現代では若い人を中心に違和感を抱かせる表現かもしれません。『難しいのです』と、『の』を入れる手もありますが、ニュアンスが微妙に変わり、素直な気持ちを表現した印象は薄れます。

 著者は、別の工夫を提案しています。たとえば、目上の方に久しぶりにお会いしてうれしいと思ったときは、『久しぶりにお会いできてうれしい一日となりました』と表現することができます。

 形容詞を『です・ます体』に取り入れる際、ああでもないこうでもないと迷うのは自分だけではないと知ることができたことは収穫でした。
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2020年09月23日

「医学統計の基礎のキソ 2」

20200923「医学統計の基礎のキソ 2」.jpg

浅井 隆 著
アトムス 出版

医学統計の基礎のキソ 1」に続いて、シリーズ 2 巻目も読んでみました。カバーされている内容は以下のとおりです。

−観察研究 (observational study) と介入研究 (interventional study)
−後ろ向き研究 (retrospective study) と前向き研究 (prospective study)
−ケース・コントロール研究 (case-control study) とコホート研究 (cohort study)
−対象者間比較 (inter-subjective comparison) と対象者内比較 (intra-subjective comparison)/クロスオーバー研究 (cross-over study)
−生存率曲線 (survival curve) /カプラン・マイヤー曲線 (Kaplan-Meier curve)
−相関係数 (correlation coefficient)/ピアソンの r (Peason's r)
−感度 (sensitivity) と特異度 (specificity)
−陽性的中率 (positive predictive value) と陰性的中率 (negativee predictive value)
−相対危険度 (relative risk:RR)/リスク比 (risk ration) とオッズ比 (odds ratio:OR)
−NNT (number needed to treat)

 シリーズ 1 巻目に比べて、統計を使う場面が医療中心に移ってきた印象を受けました。たとえば、感度や特異度は役に立たないとし、陽性的中率や陰性的中率が紹介されている点などです。医療の現場の視点で感度や特異度を見たことがなかったので、新鮮でした。

 少しネット検索してみたところ、わかりやすい図がありました。

20200923「医学統計の基礎のキソ 2」1.png

 同様に、NNT という用語も知らずにいたので、参考になりました。NNT は、治療効果を得るのに必要な人数のことで、値が小さいほど治療が有効な確率が高いと判断できる指標です。ふたつの薬をふたつのグループに対して投与し、その結果を比べるという場合、帰無仮説を利用し、有意差を確認後、平均、標準偏差、信頼区間などの差を見るのだと想像していましたが、たしかに NNT のほうがずっと実際的です。

 医学統計は、知識も経験もまったくないので、基礎のキソでも学ぶべきことが多くありました。

【出典】
つねぴーblog@内科専攻医
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2020年09月22日

「全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】」

20200922「奇跡の経済教室【戦略編】」.png
中野 剛志 著
ベストセラーズ 出版

目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」を読んで、衝撃を受けたので、【戦略編】も読んでみました。新聞でも最近よく目にするようになった MMT (Modern Monetary Theory) が解説されています。

【基礎知識編】では、通貨が何かわからなくなったと書きましたが、【戦略編】では、通貨の需要がどのように生まれたのかが説明されています。

 通貨の場合、政府が納税義務を法定することにより、その支払い手段である通貨に需要が生み出されたと著者は、書いています。これは、政府が公共サービスを実施するために、税を集めるのではなく、通貨発行権を得るために税を徴収するように読むことができ、発想の転換が求められる考えです。

 そして、公共サービスを継続するために発行しているとわたしが考えている国債について著者は、財源確保のために国債発行は必要ないが、金利を調節するために必要なのだと、以下のように説明しています。
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@ 政府が支出を行うと、支出額と同額分だけ、民間事業者の預金が増え、同時に、民間銀行の日銀当座預金もまた、同額だけ増える。

A そうすると、日銀当座預金の超過が生じて、金利が低下するため、政府は、国債を発行して、民間銀行に売却し、金利の水準を維持する。

B その結果、財政支出は、それと同額だけ民間部門の預金を増やし、金利は不変となる。
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 つまり自国通貨の発行権をもつ国であれば、上限を気にせず、必要なだけ国債を発行できることになります。

 しかし、米国も日本もそうは考えていません。著者は、その理由を『レント・シーキング活動』(特定の集団、具体的には投資家や富裕層が自分たちの利益のために、ルールや政策を誘導する活動) だとしています。

 つまり、未来の国民のために財政健全化を謳っているけれど実は、労働者がますます貧しくなってもいいので、投資家などがますます富むことができるよう、消費税導入などの政策を誘導しているというわけです。

 いろいろ腑に落ちる点があり、MMT を正しいとする方が増えているのも納得できます。ただ、いままでと正反対の考え方にすぐには馴染めない気もします。
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