2021年01月08日

「NO HARD WORK! 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方」

20210108「NO HARD WORK!」K.png

ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン (Jason Fried/David Heinemeier Hansson) 著
久保 美代子 訳
早川書房 出版

 タイトルを見て、にわかには信じがたいと思いましたが、著者たちがソフトウェアパッケージの開発を仕事としていることを考えると、いくらか現実味が感じられました。

 著者たちが共同創設者のベースキャンプ社で無駄だと考えることを実際に読み進めてみると、これまでわたしが大勢に抗えず口に出せずにいたことや、ずっと目を逸らしてきたけれど本当はそうすべきではないかと頭の片隅で思ってきたことが数多くありました。そのいっぽう、本当に思いつきもしなかったこともありました。

 わたしの勤務先の方向性とはまったく異なるものの、強く頷いてしまったのは『人が何かを好むか嫌うかを問題にするが、人はしばしば、好き嫌いより、使い慣れているかどうかを重視して、慣れているものがいいと考えるものだ。それを奪うのは暴力的な行為で、親切ではない』という部分です。

 これはソフトウェアのアップグレードの話です。ベースキャンプ社は、驚くことに、21 年にわたってリリースしてきたすべてのバージョンをサポートし続けています。もちろん古いバージョンをサポートするのにもコストはかかりますが、それはかつて自分たちが生み出した『遺産の維持費』と考えています。

 わたしの勤務先では、フィーにつき一種の従量制を採用しているプロダクトでは、多くのユーザーが使って大量のデータを処理している場合、つまり多額のフィーをいただいている場合、例外的に古いバージョンをサポートすることがあります。しかし、ベースキャンプ社ではユーザー数が多かろうと関係なく 1 社あたりの請求額をすべて統一しているため、このような発想は生まれようがありません。

 彼らの一律定額料金制度は、ズバ抜けて高い支払いをしている顧客、つまり要望を優先させなければならない顧客を生まず、自分たちの意思とさまざまな顧客の声に基づいてソフトウェアをつくる自由をもたらしたというわけです。業界の常識に捉われてきたわたしが思いつくことができない発想です。

 そのほかベースキャンプ社では、提案者が練りに練って会議で発表したことに対し、その場で聞いた人々が条件反射的に意見を言うのをやめて、文章化された提案を検討し、条件反射ではないフィードバックをすることにしています。また、さまざまな知識や経験を有し、周囲から頼りにされている人材が、自身の業務に支障をきたすことがないよう、大学のオフィスアワーのように相談を受ける時間を定めたりする工夫も実施しています。

 大きな気づきや参考になる小さな事例が詰まった本でした。
posted by 作楽 at 20:00| Comment(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする