
藤 俊久仁/渡部 良一 著
秀和システム 出版
内容が大きく二分されます。ひとつは理論で、もうひとつは個別具体的なチャートをもとに改善策を示す実践的内容です。前者でおもしろかったのは、ビジュアライゼーションの目的による分類です。後者では、いくつか新しい気づきを得ることができました。
ビジュアライゼーションの目的による分類は、次のような図であらわされていました。

『仮説検証型』の例としては、売上の半分以上はリピーターによって占められているのではないかという仮説を立てたうえで、データを視覚化し、仮説が事実かどうかをデータで裏付けるというプロセスになっています。
『仮説探索型』の例としては、売上を伸ばすためにデータから何かわかることはないだろうかという漠然とした目的や疑問をもとにデータを視覚化し、消費者向けの製品カテゴリを改善させれば売上が伸びるのではないかといった仮説を導き出すプロセスです。
『事実報告型』の例は、売上・利益・客数を週次でモニタリングしたいといった定点観測指標を視覚化し、売上は増えているのに利益が減っているのはなぜだろうかといった傾向の把握や着目点の特定に至るプロセスです。
『事実説明型』の例は、データをもとに伝えたい一連の事実や発見を視覚化し、作り手が伝えたいことを読み手が理解できるようにします。
『事実報告型』の『事実』にしても、『事実説明型』の『事実』にしても、視覚化した時点で何らかの意図が入り込むので、『事実』ということばがありのままの姿を指しているとは言えない気もしますが、著者の意図はわかります。
『主張説得型』は、自分の主張を訴えかけるためにデータをもとに事実や発見を視覚化し、作り手が伝えたいことを読み手が理解するという流れになっています。
『主張表現型』は、データを用いた新しい表現や美しさを追求して、データを視覚化し、読み手の共感・感動が得られるというプロセスを意図しています。
もちろん、これが絶対的な分類ではないと思いますが、こういった類型化は興味深い試みだと思います。