2021年09月15日

「洗脳 スピリチュアルと妄言の精神防衛テクニック」

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米地 英人 著
三才ブックス 出版

 2021 年 1 月 6 日、米国議会議事堂が襲撃される事件が起こり、その映像を見てから、『洗脳』というものが気になっています。その人なりの信念や事情があって違法行為に手を染めたとしても、証拠を残したくないという心理が働くと想像していましたが、彼らは自らの襲撃をスマホで記録し、SNS に投稿すらしていました。そんなことをしたのは、洗脳状態だったからだろうかという疑問をもったのです。

 脳機能学者、計算言語学者、分析哲学者などの肩書をもつ著者は、脱洗脳の専門家としてオウム事件の捜査に貢献した実績があり、軍や政府関係者がテロリストらに洗脳されることを防ぐ洗脳プログラムを開発した経験もあります。

 著者によると、洗脳では、3 つの概念、@変性意識、A内部表現の書き換え、Bアンカーとトリガーの埋め込みが重要になるそうです。

 わたしがイメージしていた『洗脳』は、この『内部表現の書き換え』に該当するようです。これは、自らつくり上げたイメージを、洗脳したい相手の心に植え付ける、要は相手にも自分が見ているイメージを見させて、なおかつそれを操作することだと著者は説明しています。

 そしてその『内部表現の書き換え』を行なうには、『変性意識』状態が必須になるそうです。『変性意識』とは、いわゆるトランス状態のことを指し、臨場感 (=リアリティ) を感じている世界が物理的な現実世界ではなく、仮想世界にある状態のことだといいます。

 『変性意識』状態で、『内部表現の書き換え』を行なう際、鍵となるのは、ホメオスタシスです。辞書では『生物体の体内諸器官が、外部環境 (気温・湿度など) の変化や主体的条件の変化 (姿勢・運動など) に応じて、統一的・合目的的に体内環境 (体温・血流量・血液成分など) を、ある一定範囲に保っている状態、および機能。哺乳類では、自律神経と内分泌腺が主体となって行われる。のち、精神内部のバランスについてもいうようになった。』とあります。洗脳者が被洗脳者のホメオスタシスに同調させることにより、『内部表現の書き換え』を実現させやすくなるそうです。

 ただ、洗脳者がいなくなると、ホメオスタシスは『正常な状態』に戻ろうとし、『内部表現の書き換え』が持続しません。それを阻止し、被洗脳者のホメオスタシスの働きそのものを書き換えるのがアンカー (記憶すること) とトリガー (引き金となること) だそうです。

 オウム真理教の場合、LSD を使って信者に至福体験を施し、その間ずっと教祖が唱えるマントラのテープを流し続けたり、教祖の顔写真を壁に貼り付けたりしてました。すると、信者はマントラを聞いたり、教祖の顔を見たりすると、LSD で得た快楽体験が蘇ってきます。この場合、教祖の声や顔が『トリガー』で、快楽体験が『アンカー』です。

 アンカーとトリガーの効果を持続させるために、トリガーを日常生活のなかで繰り返す出来事 (シャワーを浴びるなど) に設定しておき、何度もアンカーを発動させて、トリガーとアンカーの結びつきを強化させていくそうです。

 米国議会議事堂を襲撃した人たちが洗脳状態にあったと仮定すると、SNS などインターネット越しに『変性意識』状態に陥ったということなのでしょうか。あるいは、そもそも洗脳ではなかったのでしょうか。疑問は残りますが、こうした洗脳のメカニズムを知って、自分自身が洗脳されないようにすることのほうが大切かもしれません。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする