2021年10月03日

「図解作成の基本」

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吉澤 準特 著
すばる舎 出版

 図解作成の基本を伝授する本だけに、図解作成に必要な考え方が、ひとつの図にまとめられていて、それを見るとすべてが伝わるようになっています。

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 最初に、キューブに注目します。ここでは、図解で押さえるべきポイント、(1) フォーム、(2) カラー、(3) ポジションそれぞれにおいて、基本のプロセス@からBを先に検討し、最後に必要に応じてCを加えることが勧められています。たとえば、(2) カラーの場合、白黒ベースの無彩色を基本とします。もし強調したい部分がある場合は、1 色だけベースカラーを選び、さらに複数を強調したい場合は、そのベースカラーに濃淡をつけて対応するというものです。もし、ベースカラーだけでは充分にアピールできない場合に初めて、ベースカラーと反対色にあたるアクセントカラーを用いる手順が登場します。

 必要最小限でスッキリさせるという、基本的な流れが (1) フォーム、(2) カラー、(3) ポジションで統一されていて、わかりやすいと思いました。

 次に、キューブの外側にある図形の使い方に注目します。図形ごとに何をあらわすかルールを定めることが勧められています。図形ごとに次のような意味づけが提案されています。(a) から (e) の範囲では、標準的な図形を使っていますし、意味づけの参考になると思います。

【a:情報や概念】
・四角形……具体性のある考え方、事実
・三角形……増加/減少、集中/拡大、上下関係、目標点
・丸四角形……抽象的な概念、主観的な意見、推測
・円・扇形……抽象度が最も高い概念、未確定な情報、割合

【b:つながる向きと強弱】
・線・矢印全般……順序、矢印方向への働きかけ、詳細、まとめ
・円弧・アーチ……線・矢印と同じ (円周に沿って配置)

【c:集合関係】
・かっこ全般……カサ内側の要素のまとめ、外側の包含関係

【d:時間の流れや変化】
・矢羽・ブロック吹き出し全般……時間の単位・流れ、結果

【e:理由や説明】
・吹き出し全般……理由や追加情報、憶測、心理的情報

 そのほか、図全体としてのパターンの使い分けについても、わかりやすく図になっていて、図解の要点が伝わってきます。

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 いずれの図も、伝える力を見せつけるような力作だと思います。
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2021年10月02日

「世界の日本人ジョーク集」

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早坂 隆 著
中央公論新社 出版

 著者は、『日本人ジョークは日本に対するイメージの発露であり、日本人独特の普遍性を含む結晶なようなもの』と、まえがきで語っています。的を射た意見だと思います。

 自分を含む日本人がどう見られているかに注意を払ってジョークを読み進めたなかで、わたしたちも、そろそろ変わるべきだと思ったのは、集団行動に関するものでした。
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 ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。
 船長は、それぞれの外国人乗客にこう言った。
 アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
 イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」
 ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」
 イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」
 フランス人には「飛び込まないでください」
 日本人には「みんな飛び込んでますよ」
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 ダイバーシティやインクルージョンを目指すなら、もうひとつ変わる必要があると思ったのは、議論をしていく姿勢だと思います。
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 国際会議において有能な議長とはどういう者か。
 それはインド人を黙らせ、日本人を喋らせる者である。
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 働きすぎを揶揄される次のようなジョークも身に沁みました。
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 イソップ寓話のアリとキリギリス。世界の国々ではこんな話になるだろう。
 アメリカの場合。
 ヴァイオリンばかり弾いていたキリギリスだが、その腕前がテレビプロデューサーの目に止まり、一躍スターに。キリギリスは大金持ちとなった。
 旧ソ連の場合。
 アリは玄関先で倒れていたキリギリスを助け、食べ物を分け合う。しかし、結局は食糧が足りなくなり、アリもキリギリスも死んでしまう。
 日本の場合。
 アリもキリギリスもカロウシする。
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 わたしが一番気に入っているというか、揶揄されても一向に暗い気持ちにならなかったのは、ベストセラーに関するジョークです。
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 それぞれの国で最も読まれている書物とは?
 アメリカ……新約聖書
 イスラエル……旧約聖書
 イスラム諸国……コーラン
 日本……マンガ
 中国……毛沢東語録

<結論>世界で読まれているのはファンタジーばかりである。
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2021年10月01日

「プロフェッショナルの言葉」

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NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』制作班 著
幻冬舎 出版

 番組制作班によってまとめられた 81 の仕事訓が載っています。知人から譲り受けたことをきっかけに読んだのですが、人によって響くことばは違うのだと実感しました。その知人はわたしと違って、自己肯定感がとても強く、常に人と接する仕事をしているからか基本的に人の助言には耳を貸しません。

 そんな知人に響いたことばのひとつは、企業再生弁護士の村松謙一氏のことば『情けは人のためならずってね。それは依頼者に教えてもらったんだよ』です。経済合理性が叫ばれる今でも、小さな思いやりが世の中を巡っていくと信じる村松氏の信念に共感したようです。

 また、『批評家になるな。いつも批判される側でいろ』ということばを伝えた脳神経外科医の上山 (かみやま) 博康氏の『こと患者さんに関わる問題となると、自らが正しいと信じる意見を絶対に曲げ』ない姿勢にも感銘したようです。

 翻って、わたしが共感できたのは、『やんなきゃいけないところに自分を追い込んで、どれだけ粘れるか。理由や言い訳は幾らでもある。ヘボが作る映画は、ヘボなんだよ』という宮崎駿監督のことばや、『私にできることは、最後の最後まであきらめないことだけだから』という海獣医師、勝俣悦子氏のことばです。諦めそうになったその先で差がつくと普段から思っているから、響いたのかもしれません。

 また、『結果が出なくなったときには、今まで思い続けてきたことを、どれだけ思い続けられるかが大事です』ということばは、品格を失ったら、それはもう仕事ではないのではないかと疑問に思うことの多いわたしに『思い続けてきたこと』を思い出させてくれました。このことばを発した祖母井 (うばがい) 秀隆氏は、サッカークラブでジェネラル・マネージャーを務めながら、プレーに表れる選手たちの「人となり」が与える感動を観客は望んでいると考えていました。そして、チーム成績が振るわなかったある時期、いわくつきの選手を獲得するかどうか迷っていました。その選手は、フランスでは知らぬ者のいないトップクラスでしたが、以前移籍を打診した際に、陰で別のクラブとも交渉し、天秤にかけていたひとです。結果的に交渉を打ち切った祖母井氏は、組織の居住まいを正したのです。

 そして、石橋を叩いて割ってしまい渡れなくなると揶揄されたわたしは、左官の挟土 (はさど) 秀平氏のことば『臆病な奴が勇気を出すからいいんです。臆病な奴が勇気を出してチャレンジするから、成功するんです』ということばにも励まされました。
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