2021年10月01日
「プロフェッショナルの言葉」
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』制作班 著
幻冬舎 出版
番組制作班によってまとめられた 81 の仕事訓が載っています。知人から譲り受けたことをきっかけに読んだのですが、人によって響くことばは違うのだと実感しました。その知人はわたしと違って、自己肯定感がとても強く、常に人と接する仕事をしているからか基本的に人の助言には耳を貸しません。
そんな知人に響いたことばのひとつは、企業再生弁護士の村松謙一氏のことば『情けは人のためならずってね。それは依頼者に教えてもらったんだよ』です。経済合理性が叫ばれる今でも、小さな思いやりが世の中を巡っていくと信じる村松氏の信念に共感したようです。
また、『批評家になるな。いつも批判される側でいろ』ということばを伝えた脳神経外科医の上山 (かみやま) 博康氏の『こと患者さんに関わる問題となると、自らが正しいと信じる意見を絶対に曲げ』ない姿勢にも感銘したようです。
翻って、わたしが共感できたのは、『やんなきゃいけないところに自分を追い込んで、どれだけ粘れるか。理由や言い訳は幾らでもある。ヘボが作る映画は、ヘボなんだよ』という宮崎駿監督のことばや、『私にできることは、最後の最後まであきらめないことだけだから』という海獣医師、勝俣悦子氏のことばです。諦めそうになったその先で差がつくと普段から思っているから、響いたのかもしれません。
また、『結果が出なくなったときには、今まで思い続けてきたことを、どれだけ思い続けられるかが大事です』ということばは、品格を失ったら、それはもう仕事ではないのではないかと疑問に思うことの多いわたしに『思い続けてきたこと』を思い出させてくれました。このことばを発した祖母井 (うばがい) 秀隆氏は、サッカークラブでジェネラル・マネージャーを務めながら、プレーに表れる選手たちの「人となり」が与える感動を観客は望んでいると考えていました。そして、チーム成績が振るわなかったある時期、いわくつきの選手を獲得するかどうか迷っていました。その選手は、フランスでは知らぬ者のいないトップクラスでしたが、以前移籍を打診した際に、陰で別のクラブとも交渉し、天秤にかけていたひとです。結果的に交渉を打ち切った祖母井氏は、組織の居住まいを正したのです。
そして、石橋を叩いて割ってしまい渡れなくなると揶揄されたわたしは、左官の挟土 (はさど) 秀平氏のことば『臆病な奴が勇気を出すからいいんです。臆病な奴が勇気を出してチャレンジするから、成功するんです』ということばにも励まされました。