
櫻井 弘 著
三笠書房 出版
効果がスグに現れるというタイトルに嘘はないように感じました。著者は『私たちが誰かと話すときに考えておきたいポイントのひとつに、「何を話すか」ではなくて、それが相手に「どう聞かれるか」ということがあります』と書いています。この視点を忘れないだけで効果は現れる気がしました。
たとえば、人を不快にするような発言、つまりなおすべき言葉のクセを見つける方法が 3 つ紹介されています。最初に、周囲の身近な人に自分のクセを聞き、その答えをいったんは素直に聞き入れることが勧められています。次に、周囲の人の言葉グセを観察し、自らの受け止め方をしっかり認識することも有益とされています。自身が不快に感じた言葉は、人も不快にさせると考えるべきでしょう。最後に、できるだけ間をとって話すことが重要とされています。そうすれば、相手の反応に気を配る余裕がうまれ、相手が少し表情を変えたとき、何か気になることがあったか、その場で確認できます。
なおすべき言葉グセの具体例として、ある窓口業務でのひとコマが紹介されていました。何度も同じ質問をしてくる相手に対し、担当者が「ですから、先ほども申し上げましたように……」と多少面倒くさそうに、もう一度同じ説明を繰り返そうとしたのに対し、相手がこう言ったそうです。「お前の説明は専門用語ばかり使って、わかりにくいんだよ」。自分がわかっていることは相手もわかって当然という姿勢が『ですから』という言葉に現われ、聞き手としては聞いている側に問題があると言われているように感じても不思議ではありません。著者は、『ですから』の代わりに「どの部分が特にわかりにくかったですか?」と質問してみることを勧めています。
話す目的は、うまく話すことではなく、相手に伝えることなのに、それを忘れてしまいがちです。これは、その基本に立ち返るよう勧めている本だと思います。