
雨宮 寛二 著
KADOKAWA 出版
2020 年代がまだ半分も終わっていないのに、なんとも気の早いタイトルだとは思いましたが、『持続的な競争優位を築き上げる経営を実現している』企業の取り組みがわかりやすく説明されていて、興味深く読めました。
この本で取りあげられている企業は全部で 16 社で、Pfizer Inc. (ファイザー)、株式会社木村屋總本店、アイリスオーヤマ株式会社、株式会社 SUBARU (スバル)、ソニー株式会社、オムロン株式会社、Starbucks Corporation (スターバックス)、株式会社良品計画、株式会社ニトリ、株式会社リクルートホールディングス、株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES (スシロー)、サントリーホールディングス株式会社、Microsoft Corporation (マイクロソフト)、Amazon.com, Inc. (アマゾン)、Apple Inc. (アップル)、Google Inc. (グーグル) です。
企業の取り組み内容だけでなく、どういった点が高い評価を得ているかなど理論面の解説も添えられています。ただ、『最重要』レベルの情報がまとめられているため、わたしにとっては、ほかでも知る機会があった事例も含まれていました。そのなかで、もっとも印象に残っているのは、スターバックスが取り組むダイバーシティの推進に関する解説です。
多様性に富む職場環境のほうが、創造的な成果が生まれやすいと一般的に言われています。この本では、『ダイバーシティは、「タスク型ダイバーシティ (task diversity)」と「デモグラフィー型ダイバーシティ (demographic diversity) の 2 つに大別』されると説明されています。
前者は、能力や知見、経験、価値観、パーソナリティなど外見からは識別しにくい多様性を意味し、後者は、年齢、性別、国籍、人種など目で見て識別しやすい多様性を指すそうです。そして、これまでの研究から、前者は、企業にとってプラスの効果を生み、後者は、プラス効果を生み出さず、場合によってはマイナスの効果をもたらすことがわかっているそうです。マイナスの効果が生まれるのは、組織内で認知バイアスが生まれることがおもな原因になっています。
そのため、認知バイアスを取り除くプログラムを取り入れるなどの工夫が必要になるそうです。スターバックスでは、タスク型ダイバーシティが取り入れられ、パフォーマンス向上にひと役買っているそうです。『多様性』ということばがひとり歩きしている感がある昨今ですが、スターバックスが 20 年以上という時間をかけて取り組んできたことには、重みが感じられました。