2022年12月30日

「会計クイズを解くだけで財務 3 表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方 実践編」

20221230「世界一楽しい決算書の読み方」.jpg

大手町のランダムウォーカー 著
わかる イラスト
KADOKAWA 出版

会計クイズを解くだけで財務 3 表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方」の続編です。前編同様、著者が決算資料を図解しながら問いを投げかけ、読者はそれらに答えながら、企業の特徴を推察できるようになっています。前編と異なるのは、そのなかで湧いた疑問を確かめるためには、有価証券報告書のどのあたりを見ればいいのかを紹介している点です。

 たとえば、ヒット商品の有無が業績の明暗を分けるゲーム業界については、有価証券報告書の『事業等のリスク』を読み、企業がどういったリスクを想定しているかを確認するよう勧めています。この『事業等のリスク』は、2003 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、開示が義務化されたもので、任天堂の『事業等のリスク』を読んだことによって、その義務化の背景が納得できました。

 同様に、1999 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、開示が義務化されたキャッシュフロー計算書の重要性を納得できたのは、ワタミの事例です。ワタミは、『和民』などの外食事業を中心に、宅食や人材サービス事業も展開していますが、かつて介護事業も展開していました。しかし、それを売却する決定を 2015 年 12 月に下しました。

 その時点で赤字に転落していたのは外食事業であって、介護事業ではありません。利益を生み出し、将来性も見込める介護事業をなぜ売却したかについて、著者はキャッシュフローを用いて説明しています。ワタミの介護事業は、現金流出が激しく、不足する現金を補ってくれる外食事業が傾いたときに、継続することが難しくなったと推察されます。

 逆に、常に赤字ながら、現金が尽きないメルカリの事例も、興味深く読めました。損益計算書 (P/L) 上は赤字でも、キャッシュフロー計算書 (C/S) の営業活動では、黒字になっている事例です。これは、右肩上がりに増えているユーザーからの預り金が増えていることが理由です。P/L だけでなく、貸借対照表 (B/S) や C/S も見て、総合的に決算資料を読むのが重要だとあらためて学ぶことができました。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(経済・金融・会計) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月29日

「この言葉の語源を言えますか?」

20221229「この言葉の語源を言えますか」.png

日本語倶楽部 編
河出書房新社 出版

 さまざまな言葉の由来が載っているのですが、わたしにとって身近な話題が印象に残りました。

 ひとつめは、通貨です。米国の通貨はドルで、通貨記号は $ です。S に線が引かれて、Dollar の記号になった理由は、米国が植民地だったことが関係しています。実は、S は、Spain の頭文字だそうです。また、神聖ローマ帝国が発行した通貨に『ダーレル銀貨』というものがあり、スペインでは『ドレラ』と呼ばれていました。それが米国に渡った際、『ダラー』、つまり『ドル』と呼ばれるようになったというのです。

 日本通貨のように、通貨単位の頭文字に線を引いて通貨記号とした一般的なケースとは異なる成り立ちです。

 同様に、ポンドの £ も Pound の頭文字を使っていません。こちらは、イギリスの通貨がポンドになる前、『ライブラ (Libra)』という通貨を使っていて、その頭文字がポンドの時代に移り変わっても、残ったそうです。

 ふたつめは、翻訳ミスとも受け取れる由来です。『富める者が天国に入るのは、ラクダが針の穴をくぐるより難しい』という西洋のことわざがあります。針の穴をくぐれないのは、ラクダに限ったことではないのに、なぜラクダなのでしょう。このことわざは、もともとシリア・メソポタミアの古代語アラム語のもので、『ラクダ』にあたる『gamla』は、『ラクダ』だけでなく『縄』の意味もあるそうです。糸よりもずっと太い『縄』のほうが、針の穴を通すイメージに近いことから、意味の取り違えが語源ではないかと言われているそうです。

 みっつめは、わたしが頻繁に食べる『赤福』です。語源は、『赤心慶福 (せきしんけいふく)』という言葉にあり、『悪しき心を五十鈴川に流してしまい、人の幸福を自分のことのように喜んだりする』という意味だそうです。赤福の表面の波形は、五十鈴川のせせらぎを、白い餅は川底の白石をあらわしています。昔は、伊勢神宮のすぐそばを流れる五十鈴川で身を清めてから、参拝したという話を聞いたことがありますが、赤福の由来が高尚な教えにあるとは知りませんでした。

 言葉の由来は、確かなことがわからないことも多いですが、それでもいろいろな説に触れるだけでも楽しめます。
posted by 作楽 at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする