
大手町のランダムウォーカー 著
わかる イラスト
KADOKAWA 出版
「会計クイズを解くだけで財務 3 表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方」の続編です。前編同様、著者が決算資料を図解しながら問いを投げかけ、読者はそれらに答えながら、企業の特徴を推察できるようになっています。前編と異なるのは、そのなかで湧いた疑問を確かめるためには、有価証券報告書のどのあたりを見ればいいのかを紹介している点です。
たとえば、ヒット商品の有無が業績の明暗を分けるゲーム業界については、有価証券報告書の『事業等のリスク』を読み、企業がどういったリスクを想定しているかを確認するよう勧めています。この『事業等のリスク』は、2003 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、開示が義務化されたもので、任天堂の『事業等のリスク』を読んだことによって、その義務化の背景が納得できました。
同様に、1999 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、開示が義務化されたキャッシュフロー計算書の重要性を納得できたのは、ワタミの事例です。ワタミは、『和民』などの外食事業を中心に、宅食や人材サービス事業も展開していますが、かつて介護事業も展開していました。しかし、それを売却する決定を 2015 年 12 月に下しました。
その時点で赤字に転落していたのは外食事業であって、介護事業ではありません。利益を生み出し、将来性も見込める介護事業をなぜ売却したかについて、著者はキャッシュフローを用いて説明しています。ワタミの介護事業は、現金流出が激しく、不足する現金を補ってくれる外食事業が傾いたときに、継続することが難しくなったと推察されます。
逆に、常に赤字ながら、現金が尽きないメルカリの事例も、興味深く読めました。損益計算書 (P/L) 上は赤字でも、キャッシュフロー計算書 (C/S) の営業活動では、黒字になっている事例です。これは、右肩上がりに増えているユーザーからの預り金が増えていることが理由です。P/L だけでなく、貸借対照表 (B/S) や C/S も見て、総合的に決算資料を読むのが重要だとあらためて学ぶことができました。