
山下 景子 著
幻冬舎 出版
一年の暦に沿って毎日ひとつずつ、その日にふさわしいことばが紹介されています。わたしが惹かれたことばの多くは、四季の移り変わりが感じられる、自然に関係することばでした。
わたしの場合、一番自然に目が向くのは、桜の季節です。これまでのお花見では、木の幹から直接咲いている桜が気になっていましたが、今回初めてそれが『胴吹き桜』と呼ばれると知りました。老木がエネルギーの不足を補うために幹から直接芽を出すそうです。
この本の 4 月 3 日に『蘖 (ひこばえ)』ということばが載っています。切り株や根元から出てきた新芽のことを指しています。曾孫を意味する『ひこ』から、新芽を曾孫に見立て、ひこばえと呼ぶようになったそうです。根元からの新芽は、ひこばえ、幹や枝の途中からの新芽は、胴吹きというのだと、ひこばえを調べていて知りました。
桜の季節の少し前、2 月 28 日には『春告草 (はるつげぐさ)』ということばが紹介されています。梅を指すことばです。梅はほかにも、晋の武帝が学問に親しむと花が開き、怠ると開かなかったという故事から『好文木 (こうぶんぼく)』と呼ばれたり、春風を待つことから『風待草 (かぜまちぐさ)』と呼ばれたり、その香りから『匂草 (においくさ)』や『香栄草 (かばえくさ)』と呼ばれたりしています。その異名の多さに、現代に比べ、より春が待ち遠く感じられた時代の名残りを感じます。
春を代表する鳥のひとつ、目白は、3 月 6 日に『目白押し』として、紹介されています。目白は、身体が鶯色で、その名のとおり目の周りが白い鳥です。巣立ったばかりのころは、枝にとまる時、何羽もが身体をくっつけて押し合うようにとまるため、そこから目白押しということばができたそうです。目白を見る機会は滅多にないので、インターネットで検索してみたところ、おしくらまんじゅうということばを思い出させる、身体をくっつけている目白の画像が見つかりました。
自然に関係することばを、もっと知りたいと思わせられた本でした。