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クリスマス・プレゼントのエントリで書いた「A Visit to TEDDY BEARS」は、今でも時々開きたくなる豆本のひとつです。エッチングで描かれたくまが何ともほのぼのとしていて、心が和むのです。それでも、サイズがサイズですし、銅版で表現できる細かさに限界はあるような印象を持っていました。たぶん、くまの輪郭のちょっとごつごつした感じなどを勝手にエッチングの限界と思ってしまったのでしょう。本当は、巧みに、滑らかさを避け、くまの柔らかとはいえない毛並みを表現していたのでしょう。
そんな風に、私の銅版の限界に対する印象を変えてしまったのは、「本の手帳」(第3号)の「魅惑の蔵書票」特集です。エッチングの魅力に惹かれてしまいました。
蔵書票というのは、日本ではあまり知られていないものだと思うのですが、"Ex libris"(「蔵書」という意味をもつラテン語)の記載があり、持ち主(個人でも団体でも)が書かれているもので、本に貼られるものです。本に貼るという使い道のため、サイズはあまり大きくありません。でも、その小さなスペースに精巧なエッチング作品が収まっている蔵書票のオンパレードです。
作家によって、テーマというか雰囲気がかなり違うのですが、私がこの雑誌の中で最も気に入ったのは、戸村茂樹氏の作品。モノクロの景色を見ていても、なぜか冷たい風が通り過ぎる夕暮れ時のイメージが、私の中で膨らんできたりするのです。柔らかな赤みがかった夕焼けを吹き抜ける風。ある瞬間を切り取っているから、木々の葉が揺れているわけでもないのに、なぜか風までも感じてしまうのです。
こういう記事を見ると、自分なりの本のコレクションを持ち、凝った蔵書票を貼ってみたいという気持ちになります。実際には、コレクションを置くスペースさえ持てないのですが。
この「本の手帳」という雑誌は、残念ながら一般的には流通していません。でも、本好きの私にとっては垂涎ものの記事が時々掲載される、気になる雑誌のひとつです。