上野にある東京都美術館の展示会に行ってきました。サブタイトルが、「ウィリアム・モリスから民芸まで」。ウィリアム・モリスがあまりに個性的で印象的なので、ご一緒した方々はみなさんウィリアム・モリスがお目当てだったようです。残念ながら、ウィリアム・モリスと同世代のヨーロッパや日本(民芸)の作品も多かったです。展示順は英国(ウィリアム・モリスおよび一緒に活動なさった方々)から始まり、ヨーロッパ、日本と移っていきます。しかし、ウィリアム・モリスは最初の一部だけで、作品数としてはあまりに少なく残念だったという意見も多く、それにはわたしも同感でした。
わたしの印象に強く残っているのは、三点。
ひとつめは、「森」というタペストリー。緑の色合いも気に入ったのですが、描かれている動物がみな野性味に溢れていて、公園の中の作り物の森ではなく、本物の森をイメージできました。うさぎは、筋肉のついたスリムさが敏捷そうで、カゴで飼われているうさぎが可哀そうなのではないかと思えてきたほどです。1887年、ウィリアム・モリス、ジョン・ヘンリー・ダール、フィリップ・ウェッブによる作品で、羊毛と絹で織られているそうです。森や湖のあるお城の中に飾られるのが似合うくらい大きい作品です。
ふたつめは、「いちご泥棒」という内装用ファブリックです。1883年5月11日にウィリアム・モリスの作品としてデザイン登録されました。インディゴ抜染、木版刷り、植物染料、綿でできているそうです。デザインのきっかけは、朝ツグミがいちごを盗んでいくのを見て、思いついたのだとか。自分でも笑ってしまうのですが、こういう華美なファブリックはわたしが住むような狭い部屋には全然似合わないなどと余計な想像をしてしまうので、この手のファブリックにあまり強い興味はないのですが、例外的にこれには惹かれてしまいました。
最後は、時計。光陰矢のごとしという意味の英語が書かれてあります。1895年頃の作品で、マホガニー、顔料、金箔、真鍮、鋼鉄でできているそうです。持ったら重そうです。盤の数字の部分の文字がよくわからないのですが、不思議の国の時間があらわされている気分がして楽しいです。
あと、期待していなかったけれども、見られてよかったものというのが、本。本好きにとっては垂涎ものでした。読めないのですが、持ってみたいなあと溜息がでました。たとえば、1893年1月25日発行のウィリアム・カクストン訳の「狐のレナードの物語」は、ウィリアム・モリスが出版したもので、手漉きリネン紙に手動凸版印刷です。A3サイズくらいの大判で、A4よりひと回り大きな枠内に文章があり、その外枠は、きれいなデザインが並んでいます。手間暇がかかっているこんな作品を見ると、ますます電子媒体の味気なさが厭になり、これからも紙の本を読みたいものだとあらためて思います。
展示会などにあまり縁のないわたしですが、たまたまご一緒する機会があって行けたので幸運でした。

