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北村 薫 著
新潮社 出版
評判のよい作品のようですが、わたし自身はあまり物語に入り込めませんでした。
女子高生がある日うたた寝して目を覚ましたら、25年後になっていたという展開です。25年のあいだに、学校教師になり、結婚し、子供を産み育てたようですが、本人の中身は25年前の少女のままというものです。
物語に入り込めなかった理由のひとつは、展開のテンポがいまいちだったことです。25年という歳月を一足飛びに超えたわけですから、中年女性の精神的中身である少女は、生活のあらゆる場面で驚きを隠せません。語り手がその少女の視点なので仕方がないのですが、現代で驚くさまざまなもの、果汁ジュース、カラオケ、ファミレス、ビデオカメラなどがひとつひとつ説明されていて、現代に生活するわたしにとっては冗長過ぎる気がしました。
もうひとつは、25年を飛び越えながら、25年後の生活をなんとか表面的には破綻なくやっていく主人公にリアリティを感じられませんでした。わたしは過去25年間で別人のように価値観が変わりました。それは、ひとつひとつの経験の積み重ねの結果でしかなく、きっと違う経験を重ねていれば、また違ったタイプの別人になっていたという気がします。つまり、25年間の経験がごっそり抜けていれば、25年後の自分が生きていた役割を自分の役割と認められないと思うのです。高校生からの25年というのは、それくらいの隔たりのある時間なのに、「スキップ」できたかに見えるのは、あまりにもリアリティが感じられず、物足りませんでした。
人物描写がきめ細かく、学校という舞台も現実感ある描写だけに、スキップしたあとの順応ぶりにリアリティを感じられないのはわたしの問題のような気がしないでもないのですが、あまり心動かされる作品ではありませんでした。