2010年04月20日

「黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編」

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エドガー・アラン・ポー (Edgar Allan Poe) 著
巽 孝之 訳
新潮社 出版

 簡単に先を読めてしまうストーリー展開なのですが、描写力で読ませてしまう作品群です。どれも、狂気に満ちていて、狂気にとり憑かれているといえます。

 以下が収められているのですが、特別印象が深かったのは「落とし穴と振り子」です。

−黒猫
−赤き死の仮面
−ライジーア
−落とし穴と振り子
−ウィリアム・ウィルソン
−アッシャー家の崩壊

 落とし穴のある暗闇の部屋に閉じ込められ、落とし穴に落ちるよう仕組まれた男が運よく穴に気づき生きながらえた話です。しかし、落とし穴に落ちなかったからといって、助かったわけではありません。次には、男は横たわった状態で縛り付けられ、その上からは三日月形の鋼でできた振り子が徐々に下降してきて、男を切り裂こうとするのです。なのに、男は不思議な心の動きを見せるのです。
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 振り子はますます下降してくる−−ひそやかに、だがしっかりと。わたしはその下降速度と振幅速度を比較対照するのが奇妙に楽しくてたまらなかった。右へ−−そして左へ−−大きく幅広く−−呪われた精神が金切り声をあげる! わが心にはそれは虎の忍び足だ! わたしは笑ったり泣きわめいたりを交互に繰り返す。というのも、正反対の思いが交互に心を占めていったからだ。
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 語り手の心の揺れが伝わってきて、画像を通して見る恐怖とは違った類の恐ろしさを感じました。狂っていくのではないかという怯えの恐怖です。自分の命を奪おうという鋼の振り子が向かってくるのを見ているのが楽しい。常軌を逸した状態に弄ばれる心も、鋼同様の振り子状態なのです。その類似性ゆえに作品としての魅力が高まっている気がします。
posted by 作楽 at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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