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エドガー・アラン・ポー (Edgar Allan Poe) 著
巽 孝之 訳
新潮社 出版
「黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編」が人が内に秘めている薄気味悪い部分を隙なく描写している作品群なら、こちらは突飛な謎を解き明かす作品群です。
収められているのは以下。
−モルグ街の殺人
−盗まれた手紙
−群衆の人
−おまえが犯人だ
−ホップフロッグ
−黄金虫
別訳で読んだことがある作品も例外なく、その謎を解く場面を読みたくてページを繰ってしまいます。ただ「群衆の人」に謎解きはありません。街における人々の無名性とその妖しさが描かれています。謎解きに出くわすことなく最後まで読み終えて、がっくりしました。この点は、解説でこう説明されています。
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まずは遊歩者(フラヌール)がひしめき人間が匿名化してしまう都市小説の原型たる「群衆の人」が書かれていたからこそ、その変型として「探偵小説」すなわちミステリというジャンルが誕生したことを、いま再確認しておきたい。
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有名な「モルグ街の殺人」に先駆けて「群衆の人」が書かれていることは事実ですが、「群衆の人」の変型が「モルグ街の殺人」というのが、わたしには理解できませんでした。しかも、名探偵C・オーギュスト・デュパンが登場するシリーズ第二作目「マリー・ロジェの謎」がこの本には欠けているので、正直「群衆の人」はなくても、「マリー・ロジェの謎」を読めたほうが嬉しかったように思います。
そうはいっても、満足度の高い一冊であることに変わりはありません。ゴシック編では、描写が傑出している一方で、ストーリー展開のおもしろさがないと感じましたが、こちらはそれらのバランスが良く幅広い人が楽しめる本だと思います。