2010年05月26日

「タタド」

20100526[Tatado].jpg

小池 昌代 著
新潮社 出版

 日常生活から切り取ったかのようなシーンを著者の独特の感性でことばにした短編小説です。以下が収録されています。

−タタド
−波を待って
−45文字

 タタドは川端康成賞受賞作品です。わたしは「波を待って」が気に入りました。一番リアルにその情景を思い描くことができたのは「45文字」だと思うのですが、あまりに自分の過去の暮らしに近すぎて、好きという感覚は味わえませんでした。

 一方「波を待って」は、ほどほどに自分が感じていることを共感できてよかったです。たとえば、こんな部分。
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 海辺に来ると、侵食される。自分をどんなに守ったところで、風、砂、水、光は、容赦がない。まみれて海と一体になるしかないのだが、この一体になるという経験が、亜子の暮らす東京ではめったになく、東京で、亜子は自分自身も、細分化されたパーツのひとつとして、誰とも混ざり合わず、汚れることもなく、みぎれいな単体として浮遊していた。
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 強い陽射しのもと、パラソルでわずかにつくられた影にいるさまが思い浮かび、眼のなかに陽射しが射し込む感覚も、潮のかおりも、熱くざらつく砂やべとつく肌の不快さも、実際に鼻先にあるかのように感じました。その対極にある東京での自分自身は、砂粒のような小ささでありながら何とも誰とも交わらない孤立を思い描けます。うまく説明できない作品ですが、不思議な感覚を味わえました。

 著者は詩人だそうです。そんな雰囲気の作品です。

posted by 作楽 at 00:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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