2010年07月13日

「ぼくの名はチェット」

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スペンサー・クイン (Spencer Quinn) 著
古草 秀子 訳
東京創元社 出版

「わぉ、なんて楽しいんだ。これより楽しい犬の本があったら内緒でおしえてほしい」

 主人公チェットの口ぶりを真似してみました。チェットは、警察犬訓練を受けたことがある、体重が40キロを超えるという大型犬です。「わぉ」ってことばはチェットのためにあったのか、と思うほど、ぴったり合っています。小さな発見や小さな楽しみに溢れる毎日を生きていくのがとにかく嬉しくて仕方がないんだ、という躍動感が伝わってきて、ミステリもサスペンスもなくてもいいや、と思えるほど楽しめました。

 チェットはバーニーという私立探偵の相棒で、今回は15歳の高校生が失踪した事件を調べます。バーニーは元々警官で調査能力は優れているのですが、偶然にもチェットはバーニーの調査より先行して真相を知ってしまうことになります。残念ながら人間のことばを話せないチェットは、手がかりをバーニーに知らせようと思ったりすることもあるのですが、その試みの半分は、楽しい出来事に邪魔されて記憶の片隅に追いやられてしまう始末です。このチェットのダメっぷりがまたチェットを魅力的にしていて、思わず笑みがこぼれてしまいます。

 犬を飼っている友人が言っていました。「犬は、幸せに飽きないんです」チェットを見ているとよくわかります。革をかじる、スナックを食べる、笑い声を聞く、なんていう日常の小さな幸せに毎回反応して、嬉しそうにしています。

 猫ではなく犬が語り手になっている本を始めて読みましたが、もっと読みたいなという気分になりました。ちなみに、この作品には続編があるそうです。待ち遠しいです。
posted by 作楽 at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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