ジョン・クラカワー (Jon Krakauer) 著
佐宗 鈴夫 訳
集英社 出版
1992年の4月、米国東海岸の裕福な家庭に育ったクリス・マッカンドレスという24歳の青年が、ヒッチハイクでアラスカに行き徒歩で荒野に入っていった4ヵ月後に、餓死のすえの腐乱死体となって発見されました。
クリスは大学卒業後、およそ2年にわたって家族との連絡を絶ち米国中を旅してまわったあと、アラスカの荒野に分け入り土地が与えてくれるものだけを食べて夏を過ごす計画を立てていました。食料をほとんど持っていなかったこと、きちんとした地図を持っていなかったことなどから、自殺ではないかという憶測やアラスカの自然を甘く見すぎているという非難が起こりました。
この本の著者、ジョン・クラカワーは、クリスの家族や友人、卒業後の旅で出会った人々などに丁寧に聞き取りを行い、彼が残した日記や本への書き込みを丹念に読み、生前彼が何を考えていたのか、何を求めていたのかを追い、この本にまとめています。米国だけでなく、日本を含む外国でも出版され、ベストセラーとなった本だそうです。
ただ、わたしにはベストセラーになるほどの本だとは思えませんでした。文明を避け荒野を目指したことを非難するつもりはありませんが、とても驕った行動にしか思えず、個人的な好みとして好きになれなかったのです。それでも、読み進めていくうちに、このクリスという青年が恵まれた環境で育ったにも関わらず、敷かれたレールに疑問を感じ、自らの手で自らの道を切り開こうとした気概に敬服を覚えました。わたしの場合、自らが欲するものを探すために自分自身と向き合うことから逃げてきたように思います。どう生きていくかを突き詰めて考えたこともありません。この本がベストセラーになったひとつの理由は、自らが避けてできなかったことに向き合った青年の姿勢に感動があったからかもしれません。

