三浦しをん 著
祥伝社 出版
木暮荘という名のおんぼろアパートを舞台にした短編連作です。三浦しをんらしいユーモアが散りばめられた作品です。この作家がうまいと感じるのは、登場人物の微妙な(極端過ぎるのではなく、くすっと笑いがこぼれる程度の)ズレ具合がいい塩梅で配合されている点です。
また、人の部屋を覗き見している変態野郎が人の気持ちに届く真っ当なことを言ったり、ヤクザが人の夢を叶えてあげようと健闘したり、意外性が随所に埋め込まれてあって、読み進めるのが楽しく感じました。
あるストーリーで張られた伏線が別のストーリーで回収されるという構成も、個人的には好きなパターンなので、堪能できました。
人との過密なつきあいに疲れた人にとっても、人と接点が持てないことに孤独を感じる人にとっても、この本のなかのアパートはたぶん避難場所としてうってつけだと思います。べったりと寄りかかるでもなくまったくの無関心でもなく、住人たちが緩やかにつながっている空間を好ましく思える人に楽しんでもらえる作品のような気がします。

