
本の雑誌編集部
本の雑誌社 出版
日本のバブルがはじけたとき、私は情報システム産業でシステムエンジニアと呼ばれる仕事をしていました。なんとか1人前の仕事はできるけど、まだまだ駆け出しで、給料も最低ライン。労働組合に入っている典型的な平社員でした。こんな私が会社の人員整理対象になるなんてことはありません。でも、私の周りでは人員整理は行なわれました。整理を決めた方の中には、クライアントの中から比較的人員の多い情報システム部署を持つ企業に対し、システム開発ノウハウのある整理対象者を受け入れてもらえないか調整していた方も居ました。しかし、実際に受け入れ先が見つかりそうな方の中には、その申し出を断ってコンビニエンスストアのフランチャイズオーナーになられた方もいらっしゃったと聞きました。
システムエンジニアといえば、3K職種で、長く続けられない仕事のひとつです。日本経済が右肩上がりの成長期には、システムエンジニアの次は管理職、と漠然と考えられていましたが、バブルがはじけたとき、それはありえないと、末端の私でさえ思いました。お金を貯めたら、コンビニエンスストアの店長になれるかもしれないけど、潰さないようにやっていけないだろうなぁ、などと思ったことを覚えています。「いつ」「どこへ」「どうやって」キャリアチェンジしていくのか、この大きな課題がこの時以降ずっしりと重く私の心の隅に居座り続けるのでした。
この本屋大賞というのは、本屋が売りたいと思う本、という視点から現役の書店員が選ぶ大賞です。そういう説明だと、売れている本と本屋が売りたい本は別、という主張をなんとなく想像してしまうのですが、2006年に1位から11位にランキングされている本を見る限り、売れている本と売りたい本に大きな差はないと結論付けてしまいそうになります。この本の内容としては、まず、ランク入りした本に対する書評(現役書店員の投票にあるコメント)がこれでもか、というくらい載っています。次に得票数は少ないもののぜひ紹介したい本に対する書評があります。どれも一個人としての感想で、一読者として参考になります。
そのほかで、私が個人的に興味を惹かれたのは、紙幅は本当に限られているのですが、この大賞に対して投票した書店員の方々についての紹介です。大体男女同数の割合で、年齢は20代および30代中心になっています。書店員の低い賃金では40代以降も働き続けることは難しい環境下にあるのだとか。書店員もシステムエンジニアと同じく、中高年になっても続けるのは困難な職種なのだと意外な本で知りました。
書店員の方々はどんなところへ、どうやってキャリアチェンジをされていくのでしょうか。