2006年06月18日

「おとなの小論文教室。」

20060618「おとなの小論文教コ。」.jpg

山田ズーニー 著
河出書房新社 出版

 「大人の分別」という言葉を、意味のない言い訳として、使ってきました。

 「やりたいことができない。」と思う自分に「やりたいことではなく、やらないといけないことをこなしていくのが、分別ある大人のすること。」と。「言いたいこと、思っていることが言えない。」と思う自分に「言いたいことを言うのではなく、私が言うことを期待されていることを言うのが、分別ある大人のすること。」と。

 「おとなの小論文教室。」は小論文を書くときに使える小手先のテクニックの本ではありません。タイトルは、著者が小論文の書き方講座に長く携わってこられ、それが縁で、この本の元となった「ほぼ日刊イトイ新聞」というWebサイトのコーナーをもたれたことから、付けられた名前ではないかと思います。実際の本の内容は、小論文を書く、というプロセスを通して、自分を表現し、自由を手にしていくことを考えるという、ちょっと想像するだけでも、息が苦しくなりそうな内容の「ほぼ日刊イトイ新聞」での活動(読者と著者のメールのやりとりを元にする意見交換や著者による自分表現)をまとめたものです。

 「自分が本当にやりたいことは何なのか?」「自分の才能はどこにあるのか?」表面的に考えただけで答えが出るはずもない、もしかしたら一生答えが出ないかもしれない、そういうテーマに向き合うことは難しいことです。逆に、私のように「大人の分別」などと体裁のいい言い訳で正当化し、逃げることは簡単なことです。だから、この本は、私の心の、あるいは私の頭のどこかに刺さりました。モヤモヤとはっきりしない疑問、イライラと心をざらつかせる得体のしれないもの、そういうものから目を逸らせずに向き合い、わからないことを曝け出し、他人と意見を交し合い、進んでいく。そういう真摯な姿を、本というメディアを通してまざまざと見せられた私には、たしかに何かが残りました。私という人間に何かを与えたのは、間違いなく「著者による自分の表現」です。

 人を変えていくのは、人なのでしょう。そして、人との出会いが限られている中で、本を通した出会いもまた、私にとっては貴重な出会いです。
posted by 作楽 at 21:20| Comment(2) | TrackBack(1) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。nadmirerと申します。

トラックバックありがとうございました。
ということで、お返しトラックバックさせてくださいまし。

ズーニーさんの本を読んでいると、自分を表現することで、他者との出会いを深化させることに、ホントに真摯に向き合っていらっしゃるのだな、と感じさせられますね。。
Posted by nadmirer at 2006年06月22日 01:15
nadmirer さんへ

コメントありがとうございます。
「おとなの小論文教室。」は私が初めて読んだズーニーさんの本です。

この本の中に書かれていることは、色々印象に残っていますが、特に、自分が人に対して、世界に対して「開いている」という考え方がすごく伝わってきました。

nadmirer さんがおっしゃるとおり、ズーニーさんの真摯な姿が伝わってきて、この方の本はまた読みたいと思っています。
Posted by 作楽 at 2006年06月22日 09:05
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