2006年06月25日

「雪屋のロッスさん」

20060625「雪屋のロッスさん」.jpg

いしいしんじ 著
メディアファクトリー 出版

 「今はただ粛々と自分の仕事をするとき」と思う時期があります。チームでする仕事をしているため、やはり自分の思う通りにはいかず、しばらく様子を見ながら、流れに身を任せ、自分の仕事を静かにこなすしかない、と判断するときです。たとえば、文化の違う会社が一緒になり、それぞれの会社のメンバが集まってひとつのプロジェクトとして運営していく場合、それぞれの経験値も違えば、今の会社のプロセスに対する認知も違います。そのようなときはやはりいろんな面で時間が掛かります。人間、新しいことに対して抵抗があって当然ですし、相互の理解や円滑なコミュニケーションにも時間が掛かります。

 行き詰ったような気持ちもありながら、何とかなるさ、と時間が解決してくれる気持ちも持ちながら、あまり行動的な気分になれないとき、この「雪屋のロッスさん」の中のお話を読みたくなります。

 「雪屋のロッスさん」には、同題のほか、全部で30のお話が詰まっています。「ダ・ヴィンチ」に2002年11月号から2005年4月号までに掲載されたお話をまとめたものです。すべてのタイトルは、職業(らしきもの)の名前と人名から成り立っています。つまり、ロッスさんの場合は、雪をつくる雪屋さんなわけです。

 中には、旧街道などという職業というか物というか微妙な役割もあり、おとぎ話のようなのですが、どれも現実のひとコマを切り取って濃縮したような感覚もあります。読むとなぜか、ここで私はするべきことをしていればいいんだ、という気になります。ひとつひとつが数ページのとても短い話なのですが、ずんとした重みを感じ、ときどき、中のひとつのお話を読み返したくなります。私のお気に入りは、「似顔絵描きのローばあさん」。人の深い部分を見ているローばあさんのようになりたいと、どこかで思っているのかもしれません。

 読み返すたびに、違う顔を見せてくれる、そんなお話がつまった不思議な本です。
posted by 作楽 at 21:51| Comment(2) | TrackBack(1) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
 この本は本当に良かったです。
>ここで私はするべきことをしていればいいんだ
 はい、自己肯定の、優しい気持ちになりました。 
Posted by indi-book at 2006年07月29日 19:33
indi-bookさんへ
コメント、どうもありがとうございます。
私はこの本の読み始めたとき、その良さがわかりませんでした。読んだあとの感じが良くて、初めて良さに気付きました。同じようにいいと思われる方がいらっしゃって、うれしいです。
Posted by 作楽 at 2006年07月30日 07:22
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雪屋のロッスさん
Excerpt: いしい しんじ 雪屋のロッスさん 「雪屋のロッスさん」 いしいしんじ・著 メディアファクトリー・出版 『様々な職業のとても小さなお話し、しかし、めちゃめちゃ感動します』 ..
Weblog: 個人的読書
Tracked: 2006-07-29 19:36