
ポプラ社 出版
<収録作品>
『女生徒』 太宰 治 著
『ドニイズ』 ラディゲ 著/堀口 大學 訳
『幾度目かの最期』 久坂 葉子 著
百年先も読み継がれる作品というものさしで選ばれた短篇が三篇ずつ収録されている百年文庫のシリーズ一巻目です。
それぞれの巻にはテーマとなる一文字があって、これは「憧」です。巻末にすでに刊行されている巻の収録作品とそのテーマの一文字が載っています。
それを眺めていると、よく見知った作家ばかりが入った一冊が見つからないことに気づきました。好きな作家の作品が入った一冊を読んで、知らない作家に出会うというのも、いいかもしれません。
この一冊で、わたしは初めて久坂 葉子作品を読みました。この作品を書き上げた直後に自殺された作家なのですが、息が詰まるような切羽詰まった感じは、読んでいても迫ってくるものがありました。彼女の姿がありのままここにあるのではないか、そう思ってしまうほど、自分のすべてを曝けだしているような真っ向から切りかかってくる何かがありました。わたしは狡く、自分の認めたくない部分からは眼を逸らすタイプなので、読んでいて重く感じました。ただ、ここまで書けるのなら、ある意味とても強い人でもあったのではないかと思います。
ラディゲの作品はコントなのですが、おもしろいといった感想は湧いてきませんでした。ただ、早逝した作家で、この作品も十代後半に書かれたものなのですが、そのことを考えるとやはり才能ある作家なのだと再認識させられました。