2006年08月07日

「SO B. IT」

20060807[So B. It].jpg

サラ ウィークス 著
佐々木 早苗 訳
エクスナレッジ 出版

 子供の頃、クラスメートに、正己という名前の女の子がいました。男の子みたいな名前だと周りが時々からかっていました。でも、その子は一向に動じることもなく、こう話してくれたことがありました。マサミのミは自分という意味があって、自分にいつも正直に正しく前を向いて生きていって欲しいという親の願いが込められている名前だから、気に入っていると。うろ覚えだけど、たしかそんな内容だったと思います。

 正直、とても羨ましかったのを覚えています。私にだって親がいて、名前を付けてくれて、かわいがってくれていました。でも、彼女が親御さんと交わしたと思われる会話が、私にはない何か、うまく説明できないけどとても大切な何かに思え、憧れのような気持ちを感じました。

「SO B.IT」の主人公のハイディも似たような気持ちを持ったのではないでしょうか。知的障害を持つ母親はたった23個の単語しか話さず、父親は誰なのか、ハイディがいつ生まれたのかさえ教えられないのです。

 その母と小さい自分の面倒を見て育ててくれたのが隣のおばさん。とても優しいけれど、アゴラフォビアで一切外出ができないのです。

 ハイディはお母さんとおばさんの愛に育まれながらも、学校に行くこともなく12歳になります。ある日、お母さんが妊娠していると思われる時期に写した古い写真を見つけます。

 お母さんの過去を探しに、そして自分が知りたい何かを探しに、その写真に写っている場所までハイディは3日半かけてアメリカ横断ともいえるようなバスの旅に出ます。色々なことが起こり、色々な人に出会い、色々な自分の内面に気付きながら、ハイディはお母さんの過去と愛を見つけるのです。

 読んでいるときもぐんぐん引き込まれますが、読んだ後もステキな気持ちが続く不思議な本です。「こんな本があったんだ。出会えてよかった。」と思える、大切な人に勧めたくなる本です。
posted by 作楽 at 22:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
作楽さん、はじめまして
トラックバック貰ってる事に、最近気づきました。

僕のブログに比べると、すごく真面目なブログですね。
これから、ちょくちょく、遊びに来ます。
Posted by ロムルス at 2006年08月19日 13:28
ロムルスさん

コメントありがとうございます。おまけに、ちょくちょく遊びに来ていただけるなんて、すごく嬉しいです。このブログは真面目なブログでもなんでもなくて、ただ、好きな本のことを好きなように書いているだけなのですが、それでも読んでいただけるのなら、感謝です!
Posted by 作楽 at 2006年08月19日 21:41
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