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北原 照久×矢野 雅幸
シーコーストパブリッシング 出版
エンジニアとして第一線で仕事をしていた頃、私には聞かないで欲しいと思う話題がありました。就職を意識するようになった頃のことです。「どうしてエンジニアになろうと思ったんですか?」と無邪気な新人さんに聞かれると、バレるのを覚悟で嘘をつこうかと一瞬思うこともありましたが、結局、「何だったんですかねぇ。縁があったんでしょうねぇ」とごまかしていました。
それがさらに年を重ねると、面の皮もどんどん厚くなり、事実を恥ずかしいと思っても仕方がないと思うようになりました。「今とはね、全然時代が違ったんですよ。私たちの頃は、男女が同じ仕事をして、同じお給料をもらえる仕事は少なくて、その上、誰にでもできる仕事となると、これ(エンジニア)くらいしか思いつかなかったんですよ」などとすらすら言うようになっていました。
そういう答えに、若手の方は面食らうことが多かったように思います。私が知っている範囲では、プログラマーなどの職種においては特に、(ゲームなども含めて)プログラムを作ったりするのが好きだったから、IT業界に入ったという方が多いように思います。
学生の頃の私は、好きなことを仕事にするのはきついと思っていました。仕事が何かもまったくわからない状態ながら、利益を追求しなければいけない状況と自分の好みの板ばさみになるのではないかと思ったのです。
今思っても、その考えはまったく的外れだとは思いません。たとえば、プログラムを作る場合においても、プログラムが好きな方になると、もっとセンスよく、もっと高機能に、もっとパフォーマンス良く、と際限なく凝ってしまう方もよく見かけます。この場合の「凝る」とは、製造の生産性を考慮するとそこまでする必要がないと思われるところまで、ずんずん入り込んでしまう状態です。仕事ですから、お客さま、会社、自分(たち)がバランスよくハッピーになることを目指さなければならないのです。そんなに凝って、お客さまはかえって使いづらいのでは?大した意味もなく凝ったものを作るのに残業代を払う会社のことは考えてくれた?ということになるのです。
その点、もともとどういう仕事内容かわからずにエンジニアになった私は、そういうこだわりがあまりありません。仕事をしていく中で仕事が楽しくなったといっても、ビジネスとしての視点を忘れるところまでは熱中していないのでしょうか、お客さまや会社から高く評価されることが多かったように思います。そういう私を見て、どうやってそうなったかを知りたい新人さんが私がエンジニアになった理由を聞くと、かなりがっかりされます。
好きでこの仕事を目指してきた方々としては、「好きでやってきたら、こうなったんですよ」と言われたいのではないかと、推察します。
そんな私でも、人生においてあとどのくらい仕事ができるのか、を考えたとき、好きなことを仕事にしてみたいと思うようになってきました。そうして手にしたのが、この「好きなことをずっと仕事でやっていくために知っておきたいこと」
テレビの開運!なんでも鑑定団に出演の北原 照久さんと矢野 雅幸さんの対談です。
このお二人は20歳代前半の頃からのお付き合いで、お互いに相手と出合っていなければ、今の自分は変わっていたと思われるくらい影響し合ってきた仲だそうです。
お二人とも自分の好きなことに邁進するタイプみたいですが、北原さんは、特にその情熱といい、シンプルさといい、かなり並外れているように思います。本に掲載されている横尾忠則さんのポスターを見ると、それがよく現われています。北原さんのミュージアムのポスターなのですが、北原さんが前面に出ていて、彼の口癖があちこちに散りばめられています。「感動」「感激」「感謝」「万象肯定」「万象感謝」「これいいでしょ」。北原さんは、ご自分が気に入ったものを「これいいでしょ」と情熱を持って語り、好きなものを見て、「感動」し、「感激」し、すべてのことを全面的に肯定しながら、常に出会った人やものに感謝されているということでしょうね。
好きなこととはいえ、やはり仕事にしていくには、その情熱を持ち続けて、継続していくことは難しいと思います。そこを「これいいでしょ」と熱く語り、周りの方が驚いたり励ましたりされるのを受けて、北原さんはここまで歩まれていらっしゃったのだろうな、と想像できます。
「成功感性」を読んだときも思ったのですが、やはり、出会いを大切にし、感謝しながらポジティブな姿勢を崩さないことが基本だと思いました。やはり、一番大切なことは、かなり単純なことなんだとしみじみと感じてしまいます。
今、私が一番思うのは、この感謝し続けるというのが難しいということです。たぶん、関わりのある方々に心から感謝していれば、自分の好みだけに突き進む自分に対してブレーキをかけることができると思うのです。
それができれば、仕事として双方にメリットが生まれ、結果がついてくるようになるのでしょう。もちろん、好きなことをしているわけですから、人よりずっと努力できるはずで、いい結果がでやすい状況は元からあるわけです。
シンプルだけど難しいことを超えたところに成功はあるのでしょう。