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乙一 著
角川書店 出版
「一粒で2度おいしい」はグリコのお菓子のコピーです。でも、あまりにもうまくできているので、今では、グリコ関連以外のほうが多く使っているくらいではないでしょうか。私自身も、これはよかった、想像以上に楽しめた、と思わず言ってしまいたくなるようなときは、このコピーが思い浮かびます。
そんな「一粒で2度おいしい」本にまた出合いました。「さみしさの周波数」です。以前、乙一さんの本を読んだのは、「Zoo 1」「Zoo 2」。これが私にとって最初の乙一さんの作品だったため、心をというか頭を揺さぶる作品といったイメージが強かったのですが、今回の「さみしさの周波数」は、違っていました。心がしっとりと湿っていくような、逆に心がさらさらと爽やかになっていくような感じでした。だから、一粒で2度おいしい。
「さみしさの周波数」には4編の短編小説が収められています。その中で、私の中で一番印象に残ったのが、「フィルムの中の少女」。フィルムの中に現われる幽霊の少女の話です。単に怖い話では終わらないものがあります。自分の人生が人に操られているのではないか、という空しい思いと、誰かに強く必要とされ大切な人の元に帰る手助けをしたという充たされた思い。さまざまな気持ちが交錯する中で、ちょっとブルーになったり、清々しく感じたり。
どの作品もハズレがなく、楽しめる本です。しかも、著者のあとがきがくすっと笑えます。