2006年10月05日

「必笑小咄のテクニック」

20061005[HisshoKobanashinoTechnique].jpg

米原 万里 著
集英社 出版

 笑うにも知識やセンスが必要、と言えば、何となく気詰まりな感じがします。可笑しいときに素直に笑うだけではいけないの?と思う反面、やはり話の背景や歴史がわかっていないと笑えないことも多いと思うのです。そう思って、手にしたのが「ジョーク力養成講座」。笑うために必要な情報が詰まってました。

 それと似ているけれども、少し違う本を読みました。「必笑小咄のテクニック」です。どちらかというと、人の話を楽しく笑おうという立場ではなく、話をする側の視点の本です。

 話をおもしろくするためのテクニックが分類され説明されています。「ジョーク力養成講座」にも書かれていましたが、笑いにはギャップが必要です。聞き手が想定する内容と実際のオチのギャップ。つまり、聞き手が想像する内容をミスリードしながら、ギャップを大きくし、おもしろくするテクニックをパターン化しようという試みがこの本です。話をおもしろくできるのか、と最初は思っていたのですが、この本を読むと、素材が一緒でも、話す順序や話す要素によっておもしろくなったり、つまらなくなったりする、ということがよくわかります

 著者はこう説明します。「オチはゼロから創造するというよりも、見いだして演出するものなのである」私が気に入った演出方法は、「木を見せてから森を見せる」パターン。さんざん細部を説明し、何となく納得がいった途端、それに似合わない周りの状況がオチになるというパターン。一番典型的だと思うのは、「誇張と矮小化」のパターン。実話でないだけに、とことんオーバーに表現でき、笑いを誘います。

 ただ、この本を読み進めていて気になった点がひとつあります。小泉首相が頻出し過ぎるのです。彼の言動がおもしろいからなのですが、小泉首相はオチを作っているのではなく、素がおもしろいというか人を小ばかにしているというか、ジョークではないと思うのです。風刺のつもりかどうかはわかりませんが、この本にはそぐわない気がします。すでに、彼が下り坂になってから、わざわざ笑いの本に登場させる必要もなかったと思います。それを除けば、おもしろい趣向の本です。

 これが、米原万里さんの最後の本になって残念です。
posted by 作楽 at 00:36| Comment(0) | TrackBack(2) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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