
村上 春樹 著
講談社 出版
「羊をめぐる冒険」の4年半後、僕はふたたび札幌のいるかホテルを訪れます。理由は、「羊をめぐる冒険」で一緒に札幌に行った女性が、自分を求めていると感じたからです。行ってみたら、驚きの事実が待っていました。しかも、その女性(「羊をめぐる冒険」では名前がでてきませんでしたが、今作ではキキという名で呼ばれています)とは会えませんでした。でも、僕はキキとの繋がりを感じています。
読んでいるあいだじゅう意識したのは、その”繋がり”です。村上作品を読んでいると、人が生きていくということは、損なわれていったり腐っていったりすること、あるいは何かを失い続けていくことだと意識せずにはいられないのですが、今作ではとりわけ、失うもののなかに、人との繋がり、ときには場所との繋がりが含まれているのだということを意識しました。そして繋がりとは、あるときふっつりと途切れてしまうことが往々にしてあるのです。ときには、繋がっていると思い込んでいるだけで実体はもうなくなってしまっていることも。逆に、繋がろうという意識がなくとも引き寄せられるように繋がってしまうこともあります。
僕は、中学校のときの同級生五反田君と引き寄せられるようにして繋がります。その繋がりがキキへと繋がっていくのですが、それが別の繋がりをある意味絶ってしまうことになります。
読み終わったとき、自分自身がもつ繋がりのことを考えてしまいました。