
レオ・ブルース (Leo Bruce) 著
小林 晋 訳
東京創元社 出版
永らく絶版だったのが、再版されたようです。発表されたのが1955年で、1954年が舞台になって殺人事件が起きるミステリです。
素人探偵を務めるのは、小さなパブリックスクールの歴史教師、キャロラス・ディーン。生徒に唆されて犯人探しをする気になり、あちこち聞きこみに回ってそれぞれの証言の信憑性を確かめていきます。その様子が逐一描かれているので、帯には"フェアプレイで謎解きを"と書かれてあります。
殺害されたのは、金の亡者で周囲は敵だらけという老婆とパトロール中にその殺害現場に居合わせてしまったと思われる警察官のふたりです。山のように敵をつくっている老婆は殺害される動機に事欠きません。キャロラス・ディーンが聞きこみに回ったなかには、老婆から脅迫されていた者もいて、当然、それぞれの証言を鵜呑みにはできません。そうなると、読んでいるうちに証言の矛盾点を探しだそうと躍起になってしまうのですが、犯人が誰かなんてそう簡単には閃きません。
そのうち、どう事件に関わりあってくるのか理解に苦しむ情報が次々ともたらされるようになり、発想の転換が求められる結末に辿り着きます。推理が下手なわたしには、充分意外な結末でしたが、"フェアプレイ"を謳い、きちんと情報を公開しているぶん、ピンとくる人にはピンとくるかもしれないと思う内容でした。
わたし個人の好みでいえば、推理小説に一家言あるおじさんやら、キャロラス・ディーンをけしかけて犯人探しをさせた生徒やら、パブリック・スクールの校長やら、なかなかユーモラスな脇役が揃っているうえ、のどかな時代が背景になっていることもあって、読んでいて寛げたところが気に入りました。