2012年03月22日

「夜ごとのサーカス」

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アンジェラ・カーター (Angela Carter) 著
加藤 光也 訳
国書刊行会 出版

 ファンタジーのようなテイストはあるけれども、ファンタジーだと言われるとちょっと違うと異論を唱えたくなる作品です。しかも年代は1899年。その19世紀の終わりという時代が、まやかしを許すような雰囲気を醸しだしています。ここで”まやかし”という言葉を使ったのは、かつてのフリーク・ショウをイメージしているためです。なにしろ、主人公フェヴァーズは、背中に翼が生えていて、サーカスで空中ブランコを演じているのですから。そのスローガンが「彼女は事実(ファクト)か、それともつくり物(フィクション)か?」で、しかも、ブランコからブランコへ素早く飛び移るなんてことはせず、翼をつかってゆったりと飛ぶのです。スピードが遅いとなると、実は何か仕掛けがあるのでは? と勘ぐってしまうというわけです。

 構成は以下のようになっていて、この第一部でフェヴァーズは、自らの半生を記者ウォルサーに語っています。

第一部 ロンドン
第二部 ペテルブルク
第三部 シベリア

 そのいきいきとした語りを聞いて(読んで)いるうちに、フェヴァーズは本当に卵から産まれて本物の翼で飛ぶのだという気になってきます。そして、大女で大喰いなフェヴァーズの生命力溢れる逞しさに惚れ惚れとしてしまうのです。

 第二部で描かれているサーカス内の諸々のできごとは第一部に比べると少し退屈な気もしますが、第三部の終わり方も素敵で、全体としてとても楽しめた作品でした。読み終わるころには、まさにリアルとしか言いようのないフェヴァーズが、眼の前に現れた気がしました。
posted by 作楽 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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