2006年12月25日

"bull's eye"

 『The Case of the Christmas Snowman』に、雪が降り積もった日のワンシーンが登場します。Bigs Maloneyという体格のいい男の子(日本でいう小学校2年生くらい)が同級生かつ物語の主人公であるJigsaw Jonesに雪の玉を投げつけます。それが、Jigsawの背中のド真ん中に当たります。そのときのJigsawの視点から書かれた内容の抜粋です。
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 Smack! A snowball hit me. Right in the back.
 "Bull's-eye" I heard Bigs scream.
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 "Bull's-eye"のBullは牛。正確には、去勢されていない雄牛。eyeはもちろん、目。そこから想像するのは、ちょっと難しいのですが、「や〜い」とか「やったぁ」みたいな感じかと思えば、ちょっと違いました。

 『新英和大辞典&新和英大辞典』に載っている多くの訳のなかから、この状況に合うのは、次のようなものだと思います。
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1 的(まと)の中心点《通例金色》; 金星, 金的.
・hit the [make a] bull's-eye 的の中心を射る[に当たる] 《比喩的にも用いる》.
2a 的の中心を射た矢[弾丸], 正中; 命中, 的中.
b 《口語》 的を射た発言[行為]; 急所, 要点 (crux).
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 この場合、Bigsが言いたかったのは、「大当たり〜」くらいの感覚でしょうか。

 どうして、的と牛の目が関係するのか不思議で、語源をWebサイトを探してみたのですが、あまりぴったりするものが見つけられませんでした。唯一見つけられたのが、これ。
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"Bull's-eye" first appeared in this "center of the target" sense around 1833.

The question is, however, why a "bull's-eye"? For the answer, we have to go a bit further back in time. Since the 17th century, "bull's-eye" has been used as a term for almost anything small and circular, especially if it protrudes slightly, forming a hemispherical bump resembling the protruding eye of a bull or cow. Thus, at various times, "bull's-eye" has been used to designate a thick piece of glass set into the deck of a ship to illuminate the lower decks, a one-crown coin of British currency, a globular piece of candy, and a small circular window, among other things. So although the spot in the center of a target doesn't protrude like a real "bull's eye," it is small and circular and thus fit the popular definition of "bull's-eye."
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 既存の書物では、1833年頃に、標的の中心という意味で使われていたのが見つかっているそうです。

 標的の中心という意味から、標的に命中する、という意味も兼ねるようになっていったというのは簡単に理解できますが、なぜ、雄牛の目なんでしょう?それを探るために、さらに、言葉の意味を辿って17世紀まで戻ると、"bull's-eye"は、もっと広い範囲の意味を持っていて、小さくて丸く、しかも若干突出した部分があるもの全般を指していたそうです。つまり、雄牛や雌牛の目のように、半球状で隆起した形を意味していたようです。そのため、船の甲板から下甲板に明かりを入れる厚みのあるガラスを指すのに"bull's-eye"が使われたり、英国通貨のコイン、丸いキャンディ、小さく丸い窓など、色々なものの呼び名としても使われていたようです。その結果、標的の中央は、小さくて丸いことから、本物の雄牛の目のように突き出た部分がありませんが、"bull's-eye"の一般的な定義に落ち着いたようです。

 ちなみに、Webサイトを見る限り、"bull's-eye"は、ダーツやアーチェリーの的の中心部分を指すことが多いようです。

 牛を身近に見る機会なんてないので、ピンとこないのですが、牛の目がビー玉を半分に割ったように、ちょっと突き出した感じになっていることを見ることができれば、きっとこのイディオムを一生忘れないような気がします。

○○出典○○

『The Case of the Christmas Snowman (A Jigsaw Jones Mystery)』
著者: James Preller
出版社:Scholastic Paperbacks

『EPWING版CD-ROM 新英和大辞典&新和英大辞典』
出版社:研究社

『The Word Detective』
URL:http://www.word-detective.com/
posted by 作楽 at 00:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 本で見つけた表現(英語) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、

Bull's-eye の語源を調べていてお邪魔しました。

医用超音波用語で、転移性肝腫瘍を示唆する像にBull's-eye sign
というのがあるのですが、内部が高輝度で周囲を低エコーに覆われた
像をさし、雄牛の目っぽくはないな〜と疑問でした。

もう一つの呼び名で target sign ともいわれており、Bull's-eye sign は
標的状の意味であとから言われだしたんでしょうね。


ありがとうございました。
Posted by 四元 和裕 at 2018年06月26日 16:49
四元 和裕さま

コメントをいただき、ありがとうございます!

随分と難しい文章をお読みになって、このブログに辿りつかれたようで、恐れ入ります。

『標的状』という表現は、なるほどと思いました。ことばの変化をあれこれ想像するのも楽しいですね。こちらこそ、ありがとうございました。
Posted by 作楽 at 2018年06月26日 20:43
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