
ギ・ド モーパッサン (Guy de Maupassant) 著
山田 登世子 訳
筑摩書房 出版
「海外短編のテクニック」に「首飾り」と「宝石」がとりあげられていたので、両方が収められているこの本を選びました。全部でこれだけの作品が収められています。
T
−みれん
−ざんげ
−ジュールおじさん
−ミス・ハリエット
−首飾り
U
−旅にて
−森のなか
−逢いびき
−オンドリが鳴いたのよ
−ピクニック
−宝石
−男爵夫人
−めぐりあい
V
−水の上
−死せる女
−亡霊
−眠り椅子
−死者のかたわらで
−髪
−夜
編者による解説に書かれてあったのは、T章には、女性に「弱さ」を描いた作品が集められ、U章は、女の持つさまざまな顔、とりわけ男を翻弄する女を描いた作品が多く、V章は、「水の恐怖」譚だそうです。
わたしの眼から見て、グループとしてもっとも面白かったのは、Uです。女性の描写が際立っています。うぶな面などよりも狡猾でしたたかな面のほうがずっと強調されていますが、よく描けているとしかいいようがありません。できるものなら隠したいと願うに違いない女性の否定的な面を、モーパッサンが知り尽くすに至るまで何があったのかと思うと、気の毒になるほどよく観察されています。
一方、Tでとりあげられる弱さは、女性に限られません。「首飾り」の女性も「みれん」の男性も、ほんの少し勇気をもって真実を口にしていたら、まったく違った人生になったでしょう。そしてそれに気づくのは手遅れになってからなのです。
あまり古典は読みませんが、楽しめました。
1年ほど前に読んでましたが、短編だったためか記憶から脱落していた作品も多く、今回の記事を目にし再読しました。
虚栄心がもとで夫婦が背負う過酷な運命を描いた「首飾り」。あっけない結末で悲劇とも喜劇とも整理できない不思議な読後感でした。
一話毎に多様な場面・状況設定のもと、登場人物の「人間臭さ」を描ききってしまう手腕はすばらしいと思います。
コメントいただき、ありがとうございます。
たしかに「首飾り」で夫婦が見せた虚栄心は、誇れる類のことではないと思います。でも、わたしは、あの夫婦がその結果を乗り越えようと力を合わせた点に救いを感じました。
たしかに不思議な後味をもった作品ですね。