2013年02月15日

「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士<上><下>」

20130216「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士<上><下>」.jpg

スティーグ・ラーソン (Stieg Larrson) 著
ヘレンハルメ 美穂/岩澤 雅利 訳
早川書房 出版

 ミレニアム2で終わった場面から始まり、ぐいぐいと読み手をひっぱる勢いが続き、最後に事件が解決してほんの少し穏やかな雰囲気になって終わります。終わり方としては、3部作の最後にふさわしく見えると同時に、続編があっても自然な感じになっています。ただ、「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」 に書いたとおり、この作家が亡くなっているので、現実的な問題としては難しそうです。

 特に印象に残った点は3点ありました。

 ひとつめは、リスベット・サランデルの変化です。「ミレニアム2 火と戯れる女<上><下>」で、"何より気になるのは、過去において不当に扱われることしかなかったリスベットが、当作で信頼してくれる人たちを得たことにより、次作でどう変わるのかです。"と書いたのですが、そのとき想像していた以上の変化があり、驚きました。リスベットは、ストーカーに悩まされているエリカ・ベルジュを頼まれてもいないのに助けるのです。かつてはリスベットが嫉妬を覚えた相手だというのに。

 加えて、リスベットは自分が行動した結果を想像しながら、動けるようになりました。失うものがなかったかつての彼女は、感情の赴くまま怒りを相手にぶつけていましたが、他者からの信頼や社会的地位など、失うものを得て自制することを覚えたのです。こちらは、自然な流れではないでしょうか。

 二番目に印象に残ったのは、ジャーナリズムの描き方です。公安警察という権力を相手に挑む姿勢は、この作家が考える理想ではないかと思われるほど、芯のあるものでした。民は官に勝てないと内心では思っていた自分に気づかされました。

 最後は、脇役のひとりスサンヌ・リンデルの仕事に対する姿勢です。彼女は、警察官を辞め、警備会社の職員になった経歴の持ち主です。被害が確定しなければ、DVなどに苦しむ人たちを助けることができないことに苛立ち転職したのです。しかし警備会社でも、経済的余力のない人は助けられないことに歯痒さを感じています。このところ、仕事を生活の糧にしか思えなくなっていたので、この脇役が随分新鮮に感じられました。

 メッセージ性といい、テンポといい、シリーズ全体としても惹きつけられるところの多い作品でした。
posted by 作楽 at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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