2007年02月22日

「本を読むわたし―My Book Report」

20070222[HonwoYomuWatashi].jpg

華恵 著
筑摩書房 出版

 ラジオを聴いていると、昔なつかしい曲が流れてきました。ビーチまでドライブする途中によく聴いていた曲です。その曲を聴いていると、その当時ビーチで過ごした時間を鮮明に思い出しました。海の青さ、空と海の境界線、シャツの裾をはためかせる風、砂の熱さ、とりとめのない会話。

 静まりかえった池に、魚のえさを投げ入れたような感じです。魚のえさは、なつかしい曲。そのえさに群がる魚は、さっきまでの静かな池にいないと思っていた、昔々の記憶。

 「本を読むわたし―My Book Report」の著者、華恵さんにとって、色々な想い出と強く結びついているのは、いつもそこにあった本。本を手にとり、その表紙を眺めているとその本を選んだときのこと、読んだときに思ったこと、その当時に友達のこと、心にひっかかったできごとのこと、さまざまなことが本のページに挟まっているようです。

 華恵さんは、まだ15歳。とはいえ、文章はしっかりとしていて、彼女の繊細かつ豊かな感受性を十分に言葉に置き換える力を持っています。しかも、羨ましいことに、4歳程度の小さな頃のことを鮮明に覚えているのです。引越しをするたびに、大切に運んできた想い出の本が、昔の記憶を反芻させてくれているのかもしれません。

 14冊の本とその想い出が収められているのですが、本としての魅力を一番感じたのは、「I Like Me!」。アメリカでのひとりひとりの個性を認め尊重しようという考え方がいい方向に向けられている本のような気がします。いつか、手に取って読みたいと思いました。

 本に絡めた、彼女と人との交わりで一番羨ましいと思ったのは、「卒業」。本は卒業ですが、彼女の想い出は、おじいちゃんとおばあちゃんが入学式に来てくれたときのことや、そのあとの夏に花火を見に田舎を訪れたときのことです。華恵さんのお母さんとおじいちゃんは、色々ぶつかり合う仲です。親に対して素直になれないお母さん、子供が離婚したことに対しても怒鳴ってしまうおじいちゃん。その中に混じって華恵さんは、二人を細かく観察しながらも、おじいちゃんをいたわったり、お母さんの本当の気持ちを汲み取っています。彼女の優しさが伝わってきます。私は、華恵さんのお母さんのようなタイプなので、華恵さんや華恵さんのような素敵な娘を持つお母さんが羨ましく思います。

 この先の華恵さんの活躍を期待し、私の想い出と交わるような華恵さんの作品を心待ちにしたいと思います。
posted by 作楽 at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック