『Stormbreaker』は、14歳の少年Alexがスパイとして大活躍する話です。しかし、Alexは、喜んでスパイになったわけではありません。
生後すぐに両親を失くし、叔父さんとお手伝いさんと暮らしていたAlexは、叔父さんも交通事故で失くします。その交通事故を不審に思ったAlexは、疑問点を晴らそうと事故車を調べたりします。その中で、実は叔父さんはスパイだったと知らされます。そして、Alex自身がそのあとを引き継ぐよう組織から要請されます。Alexは断りますが、組織は素直に承諾しません。残されたお手伝いさんと一緒に今までの家で暮らしていくには、外国人のお手伝いさんのビザが必要であり、お金も必要であり、それらがなければ、身寄りのない14歳のAlexは施設に行くしかありません。スパイの叔父さんが残したお金は信託で21歳まで使うことができないのです。
Alexはこういいます。
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"You're blackmailing me!" Alex exclaimed.
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black+mailで、よくない連絡を表し、脅迫を意味すると推測してみましたが、大はずれでした。『のぞき見トムとハットトリック』によると、語源は次のとおりです。
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だれかを"blackmail"すると言えば、秘密をばらすと脅して金銭を要求すること。この表現は、1600年代にスコットランド高地で生まれた。
"blackmail"の"mail"は「郵便」ではなく、古いスコットランド語で「地代」を意味し、"mail"あるいは"male"と綴る。この語は、同意や契約を意味する古ノルド語"mal"に由来する。むかし、小作人は地代を銀貨で払ったが、銀貨は当時「白いカネ」と呼ばれた。だが1600年代になるとスコットランド高地の部族の長が、ほかの部族から守ってやる代わりにカネを払え、と農民や商人を暴力で脅すようになった。
このような非公式な税、あるいは追加の地代は、まもなく「白いカネ」とは反対に「黒いカネ」(black money)もしくは「黒い地代」(black rent)と呼ばれるようになった。こうして"blackmail"は、暴力で脅かしてカネをゆする習慣を指すことばになった。1900年代には、秘密を暴露しない代わりにカネを要求する恐喝がさかんになり、"blackmail"はその意味で使われるようになった。
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でも、『Stormbreaker』の例を考えると、「秘密をばらす」以外も脅し一般に使える言葉のように思います。
念のため、『新英和大辞典』でも引いてみると、次のように載っていました。
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−n.
1
a 恐喝, ゆすり.
・levy blackmail on a person 人をゆする.
b ゆすられた[強要された]金品.
c (16 世紀から 17 世紀の初期にわたって英国北部・スコットランド南部で保護を名目に)山賊が良民に強要した金品.
2 脅し.
−vt.
1 〈人を〉ゆする, 〈人を〉おどして〔金を〕しぼり取る 〔for〕 (⇒threaten SYN).
・blackmail a person for huge sums 人をゆすって大金を取ろうとする.
2 おどして〔あることを〕させる[言わせる] 〔into〕.
・He blackmailed me into giving money [information]. 私をゆすって金をしぼり取った[情報をむりやりしゃべらせた].
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名詞として使われた場合は、脅し取った金品を指すこともあるようです。また、ここでは、金品を取る以外に単に脅すことも動詞の2に書かれています。
簡単な単語の組み合わせに見えても、違う語源や意味があったりするという例でした。mailが元はmaleだったとは思いませんでした。
○○出典○○
『Stormbreaker』
著者: Anthony Horowitz
出版社:Speak
『EPWING版CD-ROM 新英和大辞典&新和英大辞典』
出版社:研究社
『のぞき見トムとハットトリック』
著者: アルバート ジャック
翻訳: 仙名 紀
出版社:小学館
2007年02月26日
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