
デボラ・クーンツ (Deborah Coonts) 著
中川 聖 訳
東京創元社 出版
なんとも奇抜な設定です。職場がラスベガスというだけでも充分非日常的ですが、この主人公の場合、非日常的といったレベルを完全に通り越しています。彼女は、ラスベガス郊外で売春宿を経営する母が15歳のとき身籠った子供で、しかも自身も15歳で家を飛び出し、30歳を過ぎたいま、ラスベガスの一等地に鎮座する成金趣味全開のホテルで、顧客関連係主任という接客上のトラブルを一切合財処理する立場にいます。次から次へと持ち込まれる問題を回転のいい頭で捌きながら、乗り回す車はフェラーリやポルシェ。そのうえ、働きながら学位を取得した努力家でもあります。
そんな彼女が素人探偵役を演じると、どうなるのでしょう? 刑事にあれこれ指図して従わせたうえ、たっぷり貸しをつくるという展開になっていて、よくあるコージーミステリの主人公とは、ひと味違います。
そんなスーパーウーマンのような主人公にも実は弱点があって、その完璧ではないところに共感しながら読めるようになっています。
ホテルが舞台となれば、どんな人物が登場してもどんな事件が起こっても不思議ではないので、このシリーズ、まだまだ続きそうです。